「17頁目 (最後の)ミントスの宿

 ×月×日 ミントスの宿


 ようやくお目当のタネを手に入れることに成功したよ! よかった!


 朝、キメラの翼でソレッタのお城まで行き、洞窟へ出発したの。武器も揃えてね。


 パーティは再びわたし、トルネコさん、ミネア、マーニャだ。


 城を出て南下していくと、使い魔って見た目だけは可愛らしい魔物ととドードどりっていう鶏の馬鹿でかい版みたいな恐鳥の群が現れる。視界画面いっぱいに広がる大軍だが、作戦は「呪文をせつやく」。こんなところで魔力の無駄使いはできない。目的地の洞窟がどのくらい広いのかもわからないので、できるだけ魔力は温存しておこうと昨晩にみんなで話し合っていたの。

 最初に遭遇した魔物のむれは難なく撃破する。

 トルネコさんとわたしの攻撃力が高いので、魔法に頼らなくてもいい感じ。


 ……と思ってたんだけど、次の戦闘でマーニャが魔法を使いやがったの。

 最近覚えたギラの上位魔法、ベギラマだ。

 確かに昨日の作戦会議も居眠りしていたし、この人って全然人の話を聞かないんだよね。

 トルネコさんなんかはさ、破邪の剣を振りかざして刀身から発せられる雷撃で敵グループに効率的にダメージを与えてくれたりしてるの。さすが武器商人だけあって知識も豊富で、色々な方法で攻撃をする術を身につけているの。立派。本当にえらい。


 それに引き換え、この露出魔お姉さんは……。工夫を全然しない。

 ミネアに愚痴をいうと「姉さんはいっつもああなんです」と疲れた表情を浮かべて言っていた。色々苦労してきたんだろうなぁ。


 その後の戦闘も、人の作戦を無視して魔法を唱えるから、魔力温存を理由にホフマンとマーニャを交代させた。

 ホフマンは魔力はないけど、攻撃力はそれなりにあるので、こういう時には役に立ってもらわないとね。


 しばらく歩くと、洞窟に辿り着いた。マーニャには日頃の行いを反省してもらおうと思って、馬車に残して探索をスタートした。

 久しぶりにメンバーに加わったホフマンもやる気満々だったし。


 ……でも、やっぱりホフマンはあてにはならないの。作戦なんて聞いているのか聞いていないのかわからないような顔をして自分勝手に行動するし、敵が瀕死だってのに力を貯めたりして攻撃しないこともあるし。


 そんな彼のスタンドプレーもあって、洞窟内で全滅しかかった。パーティ内もピリピリした空気になってしまったから、わたしは「ホフマンが足を引ってるところがあるから、ちゃんと作戦は守ってほしい」と言ったの。本当はこういうこと言いたくないんだけどね。


 すると、ホフマンはこう返してきたの。


「君はそう言うけどさ。君だってさっきの戦闘ではトルネコさんが倒した敵に向かって攻撃を仕掛けて無駄な行動ターン消費をしたじゃない」


 薄ら笑いを浮かべて憎ったらしい顔で言ってきたの。もーーはらわたが煮えくり返るくらいムカついた。

 ミネアが間に入ってくれたから喧嘩にはならなかったけど、わたしは破邪の剣で斬りかかるところだったよ。


 ホフマンにはイライラしたけど、こんなところで仲間割れをしても仕方がない。

 心を落ち着かせて洞窟探索へ。


 入り組んだ洞窟は、滑る床に手こずらされた。ツルツル滑って思うように進めないの。なんども転んだり、変なところに滑って放り投げられたりした。


 でも、諦めないで奥へ奥へと進んでいく。

 すると奥から人の声が聞こえてきた。曲がり角をまがって見てみると、美しい少女と屈強な男たちのパーティがいた。アリーナ姫だった。もっとムキムキの霊長類最強女子みたいな女の子を想像していたのに、全然違くて驚いた。


 そして、アリーナ姫と一緒にいる男たちもどこかで見覚えがあった。ブランカで出会った戦士達だった。ブランカの城では大した話をしたわけではないけど、彼らもわたしも闇の帝王を倒すために旅へ出たんだから、いわば同志だ。

 あちらもわたしのことを覚えていて、無事でいたことを互いに称え合った。


 彼女らもパテギアのタネを探していたんだけど、同じ場所を行ったり来たりしているだけで、あまりあてになりそうもないので、わたし達は独自に捜索を続けることにした。


 寒さに耐えながら洞窟内をくまなく探す。宝箱なんかもあってアイテムを獲得したりもしたんだけど、肝心のパテギアのタネはなかなか見つからない。

 それどころか、またしても宝箱に擬態した魔物『人食い箱』に手を出して、殺されかけちゃった。

 コナンベリーの東の大灯台以来。宝箱があるからって不用意に近づいちゃいけないね。

 この前もそれで危なかったのに、また同じミスをしてしまった。宝箱を開ける前には体力を確認するのを徹底しなきゃ。あ、あと次回以降のためにメモっておくと、あいつはラリホーマが効く。有効に使った方がいい。


 ちなみに、トルネコさんが人食い箱との戦闘中に隙をついて宝箱をゲットしたんだけど、人食い箱から宝箱を盗み取るのってなんだかよくわからないね。(中身はひのきのぼうだった。まじいらない)


 そんなこんなで、ドタバタの探索だったけど、わたしたちはついにパテギアのタネを手に入れた。

 洞窟の奥の宝箱に大事に仕舞われていた。

 よかった。これでクリフトさんの病も治る!

 ってことで大急ぎで洞窟を脱出して、ルーラを唱えて、クリフトさんの待つミントスの町へ向かった。(急ぎすぎてアリーナ姫にタネを見つけたことを言うのを忘れた)



 宿屋にたどり着き、「うーん、うーん」と唸るクリフトに使おうとしたのだけど、なぜか使えない。

 どういうこと? パテギアがあればすぐ治るんじゃないの?


 って首を傾げてたんだけど、ホフマンが一言


「タネじゃだめなんじゃないですか? 育てないと」



 そういうこと?。

 タネじゃ薬草の効果はないっての?


「ソレッタに行って、あの王様に確認してみましょ」


 マーニャが言うから、ソレッタに向かうことにした。……でも、タネから薬草に育てるのって、すっごく時間かかるんじゃないのかなぁ。


 ともかく、クリフトさんは辛そうだけど容態は変化していないし、もう日も暮れているし、ソレッタにいくのは明日にしようってことになった。


 そんなわけで、明日はまたソレッタに行くよ。

 頑張れクリフトさん!


 じゃ、また明日!

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