「15頁目 パテギアのありか」

 ○月♪日  ミントスの宿屋にて


 一晩明け、ソレッタで再び情報集め。


「アリーナという娘がキザったらしい男やゴツい男やら、三人ほどのお供を連れてソレッタにやってきた」


 という情報を農夫のおじさんに聞く。彼女はすでにソレッタからは旅立っているようだが。


 その話を聞いたブライさんは「そんな男たちと一緒で大丈夫かのう……」と心配そうに呟いた。ここまで一緒に旅をしてきた家臣としては気になるよね。いくら男勝りな姫様だとしても、男だらけの中で一人だけ女の子がいたんじゃ気が気じゃないもんね。

 でも、それをブライさんに言うと、

「いいえ。そうじゃござらぬ。あのおてんば姫様にその若者たちが参っていないかと心配なのですじゃ」

 とのこと。……そんなにアリーナ姫っておてんばなのかしら? 聞けば武術大会で優勝したこともあるっていうし、もしかしたら筋肉モリモリの男顔負けのマッチョ姫なのかしら? 



 城下町(という城下農村?)ではかめぼしい情報もなかったので、昨日は入れなかったお城に向かってみたんだけど、お城の中に王様はいなかった。

 大臣に話を聞くと、なんと王様も畑に出て農作業をしているらしい。王みずから働かなければならないほど貧しい国なんだって。

 大臣はため息ついて嘆いていたんだけど、その話を聞いたミネアが


「王様に働かせておいて、なぜ大臣さんは働かないのですか?」


 とか、突然びっくりするようなことを言ってのけたのでわたしゃ焦ったよ。場所が場所ならとっ捕まっちゃうよ。慌ててミネアの口を塞いで逃げるようにお城から出た。ミネアも真面目な顔して天然なのよね。時々怖くなるわ。


 城を後にして、畑を覗いてみると、本当に王様が畑仕事をしていた。王様がどんな人かは分からなかったけど、一目見てこの人が王様なんだって、すぐにわかった。だって、王冠をかぶったまんま、豪華なマントを身につけたまま野良仕事してんだもん。……変な人。

 まあ、とりあえず気さくに話しかけられる雰囲気だったので、パテギアが途絶えたというのは本当か聞いてみた。


「我が国のパデキアが全滅してからすでに久しい。前の王が、もしもの時にと南の洞窟にパデキアのタネを保管しておいたそうだが……。いつの頃からか洞窟には魔物達が棲みつき太刀打ち出来ぬ……。すまぬのう。パデキアのタネさえあれば望みも叶えられようが……」


 なるほどね。その洞窟に行けばいいのね。ってことでソレッタの城を出て南下。


 戦闘メンバーはわたし、トルネコ、ミネア、マーニャの四人。宿屋のどら息子とおじいちゃんとは馬車待機。


 南に半日、なんとか洞窟にたどり着くも、中に入れば魔物がうようよいる。この大陸でもまだ見たこと無い魔物も多くて、奥に進むのは一旦諦め、経験値を積むことにした。

 洞窟の浅い部分で戦ってレベルを上げようってわけ。洞窟の奥で全滅なんてしちゃったら悲しいものね。


 どんな魔物が出るのか、どんな攻撃方法が有効なのか、試しながら洞窟で力試し。だんだんと魔力も体力も減ってきたので、ミントスまでキメラの翼で戻ってきた。

 で、日記を開いてるってわけ。やっぱりそう簡単にパテギアのタネは手に入らないみたい。


 クリフトさんの様子を伺ってみると、相変わらず「うーん、うーん」と死にそうな顔をして唸っている。

 顔色は昨日と同じ。どうなのかな、悪化してるのかな? 落ち着いてるのかな? ブライさんは心配してないんだけど、会話もできないくらい辛そうで、こっちは不安になっちゃうよ。


 一刻も早くパテギアのタネを見つけなきゃ。明日も洞窟に乗り込むぞ。



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