「9頁目 大灯台の戦い」

 ○月◇日 


 字が汚くてごめんね、コナンベリーの東、大灯台の薄暗い中で書いている。

「せいなるたねび」は手に入れた。最上階まであと少しだ。魔物は手強いが、トルネコさんに魔物を倒すと約束したんだ。負けられない。


 ・メモ

 プテラノドンにイオは効かないって何度言ったらマーニャはわかってくれるのだろうか。じゅもんせつやくって作戦立てたのに。もうっ!



 ☆



 ほんと、大変な一日だった。


 コナンベリーの宿屋に戻ってきた。マーニャは新しく仲間に加わったトルネコさんの歓迎会をしましょ、なんて言って酒場に準備をしに繰り出してしまった。ミネアは一日の疲れが出たのか、となりのベッドで仮眠をとっている。


 いろいろなことがあった1日だったので、順を追って書いていくね。


 朝、灯台に向かう前に道具屋に寄り、ついでに船のドックも見てみた。新しい船を作っている最中だった。船の主は例の武器商人トルネコさん。彼は魔物を退治してくる、と一人で灯台に向かったらしい。


 一人で行くなんて無謀だが、なかなか勇敢な男の人のようだ。きっと筋肉隆々のナイスガイなのだろう。


「きっとイケメンのダンディなおじさまよ! お金持ちでイケメンなんて最高! トルネコさんを助けたらお礼がたんまりもらえるかもっ」


 と、マーニャがキラキラと瞳を輝かせた。動機が不純なのは考えものだが、どちらにせよ、いくら勇敢なトルネコでも一人じゃ危険だ。すぐに手伝いに行こう、とミネアと頷いた。


 アローインプ、サンドマスターなどという魔物を退治しながら東の森に入り、灯台に向かう。


 作戦は「じゅもんせつやく」口を酸っぱくして言っておいた。……特にマーニャに。


 しかし、まあ巨大ミミズの『サンドマスター』って魔物が一度に6匹くらい平気で出てくるのは参っちゃった。マーニャが手に魔力を溜めながら、


「攻撃魔法いっちゃう?全体魔法イオいっちゃう? イオで一気にやっちゃう?」


 って、何度も聞いてくるのがイライラした。橋を越えて歩くと海辺に灯台が見えた。


 大きな古代の遺跡って感じの灯台の中に入ると、丸々と太った恰幅のいいおじさんが話しかけてきた。


「おお! どなたかは知らないが、ちょうど良いところへ来てくれました! この灯台にともっている邪悪な炎を消すつもりでここまで来たのですが、魔物達が強くてこれ以上進めなかったのです。お願いです! 私に代わって邪悪な炎を消してきてくれませんか」


 なんと、これがトルネコさんだった。イケメンだと思っていたマーニャの表情が凍った。


 ……かわいそうなマーニャ。


 トルネコさんと言えど、やはり一人では魔物に立ち向かえなかったようだ。代わりに魔物を倒すことを約束する。聖なる炎をつければ邪悪な炎が消えるから「せいなるたねび」を探せと言われる。


 灯台の中は魔物の巣窟になっていた。集団でギラを撃ってくる「ひとつめピエロ」やフワフワ浮かぶ「さまようたましい」あとは空飛ぶ龍の「プテラノドン」なかなか大変な戦闘の連続だった。


 戦いはまあ大変だったけど、「さまようたましい」に対してマーニャの毒針が『急所』を刺したのは戦いの中とはいえ少し笑えた。

 だって、そうじゃん。魂の急所ってどこなのよ。生前に奥さんに浮気バレて刺されたとか、そういう精神的急所なのかしら、たしかに「さまようたましい」ったら「まごまごしてる」ばっかりで攻撃もしてこないことも多くて、精神的に弱い子なのかも、なんて思い浮かんだり。疲れてたんだろね。


 でも、マーニャが二度も三度も敵の急所を射抜くから、久しぶりにマーニャを褒めたんだけど、そしたら次の戦闘で「じゅもんせつやく」にしてるのに「さまようたましい」にメラを唱え始めて。しかも効かないっていう。ジロッと見てやったら口笛吹いて目をそらしてた。


 味方も味方なら敵も敵で、「トルネコを食い殺してやろうと待ち伏せしていた!」なんて言う魔物がいたんだけど、トルネコさんがコナンベリーに帰ったとマーニャに言われると、今から襲いに行ってやる、と大見得を切ってルーラを唱えて、飛び上がって天井に頭をぶつけて気を失ってしまった。敵も味方もなんだか抜けた奴らばかりなので脱力してしまう。


 気を失った魔物は放っておいて『せいなるたねび』の捜索を再開する。


 すると、またもや、さまようたましいの群れ。2匹ずつグループに分かれて襲ってくるから嫌な感じだった。


 すると、マーニャが颯爽と躍り出て、開口一番「イオ!」


 じゅもんせつやくって言ってるのに!

 しかも、2匹にしか効かないの。もう初めて「じゅもんつかうな!」って怒鳴っちゃった。そしたら流石にマーニャもシュンとして黙ったけど。


 あと、この塔の戦闘の最中、わたしはリレミトという呪文を覚えた。この魔法は洞窟や塔などのダンジョンから一瞬で抜け出せる便利すぎる魔法だ。早く塔から脱出したいという気持ちが呪文取得に一役買ったのだと思う。


 あと、そうだ。これは今後のためにも書いておかないといけない。宝箱だと思って喜んで近づくと、大きな口を開けて襲いかかってくる「人食い箱」って魔物だった。

 ほんと怖すぎ。うっかり手を伸ばしたマーニャが噛み付かれて、死にかけたからね。

 これにこりてもう少し慎重に行動してくれると嬉しいんだけど。


 そして、ようやく「せいなるたねび」を手に入れて最上階へ。

 この灯台を任されてる魔物「とうだいタイガー」と「炎の戦士」二体を相手に戦いに入った。


 「とうだいタイガー」はすぐ倒せたけど(真ん中に陣取ってくせに弱い)「炎の戦士」は名前の通り火の玉を吐いたりギラを唱えたりで強敵だった。守備力が低いマーニャは最後尾に配置していたけど、敵の連続攻撃をまともに受けて、あっさりと死んでしまった。


 これまで、順調に旅をしてきたので、仲間の死は衝撃的だった。ミネアは叫び、ホフマンは怒りを込めて魔物に斬りかかった。激戦だった。ブランカのお城から旅立って、ももんじゃに倒された時以来に、命の危険を感じた。


 わたしも瀕死のダメージを受けたけど、なんとか耐えて撃破。


 消沈するミネアに「教会で生き返らせることができる……と思う」と伝えて(なぜかミネアもそのことは知っていたみたいで、何故生き返るのか、なんて聞かれなかった)手に入れていた『せいなるたねび』を炎の中に投げ込み、灯台を魔物の手から取り戻すことに成功した。


 急いで塔から脱出し、コナンベリーに戻って。教会へ行きマーニャを生き返らせた。


「あーっ。あれ? ここはコナンベリー? ははん。なるほど。あたし死んじゃったのね。めっちゃ痛かったなぁ。もう死ぬのはこりごりよ」


 と、マーニャは意外とあっけらかんと言い放った。「心配したんだから!」とミネアはマーニャに泣きついて、さらにこう言った。


「生き返らすのにはお金かかるんだから、もう死なないでね姉さん」


 ……そこか?


 ともかく、マーニャを生き返らせたわたし達はトルネコさんの船の元に向かった。トルネコさんはわたし達を待っていてくれた。大きく手を広げて無事に帰ってきたわたし達のことを喜んで迎えてくれた。


「よくやってくれました! 邪悪な炎も消えて、ほら海もあんなに穏やかです。そして嬉しいことに船も完成しました! そこでお願いがあるのですが、私は魔物達に恨まれているようなのです。でもあなた方のような強い人たちと一緒なら心強いでしょう。私も仲間にしてください。一緒に世界中を回ろうじゃありませんか!?」


 渡りに船ってことわざがあるじゃない。まさにそれ! ということでトルネコさんが仲間になった。これで船も手に入った。南の大陸に行けばミントスという街があり、海に詳しい老人がいるという。まずはその街を目指そうとなった。


 っと、……トルネコさんの歓迎会の準備ができたみたい。マーニャが呼びにきたから行くね。今日はここまで。



 おまけ。

 『とらおとこ』って魔物が出た時に、マーニャが「もう!トラなのかオトコなのかはっきりしてよ!」と憤慨していたが、トラであり男である可能性は考えられなかったのだろうか?


 おまけ2。

 ムカつくからここに書いておくけど、ホフマンってなんなの?

 道具屋で薬草を買って渡そうとしたら、「ホフマンはもちたくないようだ。」って! 持ちなさいよ男でしょ!

 仲間って意識はないのかしら、作戦も絶対に守んないし、無視してくるし、もうなんなの?


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