「8頁目 豪商トルネコ」

 ○月☆日 コナンベリー


 アネイルを出発したわたしたちは海沿いを南下した。馬車は元気に走る(書き忘れていたけど馬車を引く白馬の名前はパトリシア。大きくてしなやかで飼い主のホフマンとは違って優しくて美しい毛並みの雌馬だ)

 時折、現れる魔物を撃破しつつ馬車を走らせてコナンベリーについたのは夜だった。


「港町に来るとハバリアを思い出します。キングレオ城から逃げだし失意のうちに船出したあの町を……」


 ミネアがキュッと唇を結んだ。


 コナンベリーは大きな造船所と貿易で栄えた港町だというが、街の雰囲気はどこか陰鬱だった。


 唯一、酒場からは賑やかな声が聞こえたので、のぞいてみた。

 やけっぱちみたいな調子で語られていたのは東の大灯台についての話題だった。元々は聖なる炎で海の平和を守る古代種族が作った灯台だったらしいのだけど、突如現れた魔物に占拠されてしまい、怪しげな光を放ち出すと、海は荒れて、魔物が海にも現れて、船は港を出るとすぐに座礁したり沈没したりするようになってしまったんだって。


 港からほど近い沿岸に座礁した船が打ち捨てられているのが目に入ったけど、そういうことだったんだね。


 他には噂の武器商人トルネコさんがこの街で船を買って伝説の武器を探すつもり、とか、その前にどこかの国のお姫様が二人のお供を連れてやってきてデスピサロを追って南の大陸に船で渡った、などという情報を得る。きっとサントハイムのアリーナ姫のことだろう。


 わたしが疲れた身体にムチを打って聞き込みをしているというのにミネアは席についたまま、うつらうつらしてるし、マーニャは若者の宴会に加わってお酒をご馳走してもらったり、自慢の踊りを披露して拍手をもらったりして上機嫌になっている。

 ホフマンは意外と細々とした雑事を率先してくれる男で、わたしが聞き込みをする横で宿のチェックインを済ませてくれていた。ちょっと評価が上がったんだけど……。

 ホフマンのバカ、部屋を一つしか取っていなかった。わたし達と同じ部屋で寝る気だったみたい。

 マーニャは一緒に寝てもいいじゃないなんて平気な顔して笑ってたけど、わたしは激怒。蹴り飛ばして二つを取らせた。

 わたしに怒られてるのにホフマンはヘラヘラしてたけど、もうなんなんだろこの男は。


 そんなこんなで、今後の予定としては、その灯台に行って魔物を倒して、あわよくばトルネコさんの船に同乗させてもらって南の大陸に進もうという話になった。旅にはスポンサーがいないと、ってこと。

 そんなにうまくいくかわかんないけど。


 さあ、今日はしっかり休んで明日は灯台に向かおう。宿代は四人で24ゴールド。治安が悪いからか、宿代も高くなってきた。


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