#237:無間地獄な(あるいは、殺戮の舞踏、ふたりのお宝アイらんど)

「おおおおおっ……俺のこの手も結構熱いっ!!」


 丸男が気合いなのか何なのか声を張り上げるけど、それ直で持ってるからだよね? 何か巻くなり、手に嵌めるなり、対策しよう? しかしその両手に携えた、腕の形をした焼きごてからは、今やプスプスと黒い煙が所々から立ち上っていて、見た目にもかなり熱そうだ。


 熱気だか殺気だかを感じた囚われのミズマイは、後ろを振り向くと、その恐ろしい光景に目を瞠り、エヒィィィィと情けない声を上げる。


 ……最大奥義のひとつと言っていた。震 え る が い い。


「……バぁぁぁぁぁぁヌアぁぁぁぁツぁっ!! ガッ=フィングァぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


 まずは、その赤熱した阿修羅像くんの両の掌が、固定された状態のミズマイの臀部、その両尻たぶへと、情け容赦なく、ズヌムと押し付けられる。


「あ、あああああ、あぁぁぁぁ、るでぇんてぇぇぇぇぇ!!」


 先ほどの連打打擲を受けて腫れあがっているだろう、そこへの追撃に、その痛みを想像して思わず目を逸らしてしまった僕だけど、ダメだ、見届けなくてはっ……(かな?)。ミズマイの絶叫が、観客もドン引きの空間に果敢なくこだましていく。


 だがそれだけでは無かった。


「……竿破っ!! ブゥラブゥラぁぁぁぁぁぁ、っ双ー球ー拳んんんっ!!」


 度し難くしょうもない技名と共に、直角を形作っていた阿修羅像くんの右手首が、水平に戻されると共に、掌が上を向き、親指を除く四本の指が心持ち曲げられていくっ……!! この構えはっ!! 狙っているっ……!! 尻だけでは飽き足らずっ、その先のお宝たちをっ……!!


「!!」


 今度は叫びすら出なかったようだ。熱せられた手刀がさくりと尻間から股間へと差し込まれると、ミズマイの王将とその左右の金将たちに熱が一瞬にして伝導したようだ。白目を剥いて悶絶するミズマイ。そのままガタガタと全身を震わせている。こ、これは流石にやりすぎかっ……? いや、思い出せ、こいつがアヤさんやミロちゃんにしでかした諸々をっ!!


「わ、わ、わ、ワタシの負けぇぇぇぇ、負けですからぁぁぁぁぁぁっ!! お助けぇぇぇ」


 悲壮感漂う声で、哀願するミズマイだが、やはりそれすらテンプレ感あるな。ちょっと冷静にさせられたわー。


「……もう一勝負、残ってるんで。頑張って」


 僕は微笑みつつ、既にぐしゃぐしゃになっているミズマイの目の奥を覗き込んでやる。エヒィィという小さな叫びがまた漏れ出てくるけど、最後の質問には……必ず答えてもらうぞっ。僕は腕組みをしたまま、ミズマイの目から視線を外さない。

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