#236:未来永劫な(あるいは、颯爽登場、十三代目)
「……ひとつだけ、手心を加えてあげます。勝負は三回。こちらからは順に『グー』『パー』『チョキ』と出すこと、これを教えるのがひとつ」
対局場の上、僕はゆっくりとミズマイと、それを拘束する直方体の装置の周りを巡りながら、そう告げる。
「……そしてこちらの出し手は、威力の異なる『大中小』をご用意していますが、僕の出す『質問』に真摯に答えた場合のみ、『小』に抑えることを約束します。ほら、『嘘発見』が作動していませんよね? 真実ってことです」
こいつには、こいつの口から聞いておかなければならないことがある。僕はリング脇に設置された足場に移動していたダイバルちゃんに頷いた。
「……それじゃあ、決勝開始だっ!! 第一回戦!! あ、さ~いしょは?」
ダイバルちゃんの音頭と共に、苦々しげに顔を歪めるミズマイに、僕は言い放った。
「……『初摩アヤさんをさんざん利用した挙句、捨てた理由は何だ』?」
沈黙。歯ぎしりをしながらも、ミズマイは僕を睨みつけたまま無言だ。答えられないだろう。答えて欲しいわけでもないけど。
「……『大』」
僕の指示を受け、装置の後ろ、ミズマイの背後に回った丸男が、その両手に持った金属製と思われる30センチくらいの棒をバチのように掲げた。そして、
「ま、ま、祭りじゃあああぁぁぁぁぁぁあぁっ!!」
その巨体から張り上げられる銅鑼声と共に、装置に固定されたミズマイの憐れな臀部に、その二本のバチは、意外なほどのスナップを利かされながら、雨あられと降り注いでいく。
「ハイッ、どーんどーんどーん、カカカッカ、どどーんどどーん」
興が乗ってきた丸男の、結構腰の入ったバチさばきに、期せずして観客から拍手喝采が降り落ちてくるけど、
「かっ!! かっ……!!」
喰らっている当の本人は、そのどんかつの一打ごとに、あまりの痛さからか、顔色が朱色になったり、水色になったりしている。
「……」
たっぷり一分くらいの「演奏」が終わると、それまで断続的にびくつかせていたミズマイの体から力が抜けて、首ががくりと前に倒れた。初っ端のこの一連の打撃により、だいぶ疲弊した感じだ。でもまだまだ。
「……ささっ、とっとと次行きますよ。パーティー行かなあかんのですもんね?」
僕の投げかけた声にも無反応のミズマイだったが、
「第二問。『元老院を私物化し、あこぎな商才で、裏で莫大な利益を稼いでいたのはだ~れだ』?」
次の質問には、ぴくりと身体が反応した。でも、答えられないだろう。全部、お前の悪行は掴んでいるっ!!
「お次も、『大』」
沈黙のままのミズマイに、僕は冷徹に指示を飛ばす。丸男が今度取り出したのは、阿修羅像くんの中段の両腕。
掌底を打ち放つかのように直角に曲げられた手首に、ぴんと揃えて伸ばされた五本の指。腕の付け根に当たる部分には、持ちやすいようにか、握り部分が取り付けられており、その先端からは、おそらく電熱を伝えるためのコードが、その本体へと伸びていた。
これは見たことある。チャラ男ことヤブ=シを沈めた、要は焼きごてだ。
それを両手に構えた丸男が大きく息を吸い込み、チリチリと不穏な音を立てるその得物で、目の前の獲物に狙いを定める。
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