#235:満場一致な(あるいは、YEN TOWN 劇物くん)

「……」


 リング上には、大の字に拘束されたまま、わめき散らしているミズマイ。そしてコーナーの所で所在なげに佇んでいるミロちゃんとルイさん。この二人はミズマイからの指示が無いと動けないように、何かしらのコントロールを施されているのかも知れない。ほんとにクソ野郎ですね。


「なぜ動かんっ!! 黒服どもっ!! お前らには分不相応のカネ払って雇ってやってんだっ!! 仕事をせんかっ!! 役に立て!! ワタシのために働けぇえええっ!!」


 またもテンプレ臭ただよう怒号を周りにぶつけているだけのミズマイだけど、もういいよ。お前のそれはもう飽きた。


「愛想つかされましたね……アンタに従う人はもういないんですよ。それよりも、僕との対局……受けてもらえますよね?」


 僕は、ミズマイの目の前まで歩み寄ると、その歪んだ顔を見据えながら、静かにそう言った。瞬間、観客たちの歓声が爆発する。


「……オーディエンスの皆さんも、ご立腹の模様ですよ? 自分たちが考えて、悩んでつけていた評点が、出鱈目に操作されていると知ってね」


 僕はゆっくりと、そう続ける。全てはアヤさんから聞いたことだ。それが実況少女や黒服らを通して、爆発的に観客に拡散された。


「ち、」


 ミズマイが弁明でもするのだろう、口を開けかけたのを見計らい、僕は警告を発する。


「おっとぉ~、言動には細心のご注意を。いま現在、『嘘発見』により流される電流の多寡が、大分上げられているようですからねぇ。『エビ反る』じゃ済まないレベルに」


 にやりとした僕の顔を見て、凍り付くミズマイの顔。


「……何が目的だ。カネか?」


 はいはいテンプレテンプレ。精一杯の虚勢を張って、ミズマイがそう絞り出すように言ってくるけど、もう耳を貸すのはやめよう。とっとと進行だ。


「試合形式はっ!! 『激・物理ジャンケン』……各々用意した『グーチョキパー』を使って、相手のケツにキッツいのを食らわし合う……まあ言ってしまうと、DEPとかの要素を排除した、極めてシンプルなドツき合いだっ!!」


 僕はミズマイの顔に指を突きつけ、高らかにそう告げる。


「……こちらからは、あそこで『チョキ』の試し撃ちをしている『阿修羅像くん(自律型)』がお相手仕るそうですけど、そちらも存分に撃ってきてくださいよ? まあ、その拘束状態で、独りで出来ることなんて高が知れてますけどね」


 ミズマイの顔色が青ざめ、淀んでいくのが見て取れる。状況を……やっと理解していただけたようで。そうこれはもう対局じゃなく、ただの公開処刑だ。

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