#228:熱願冷諦な(あるいは、カーミナッ/細工流々)

 DEPを撃つということがほとんど無かったわりには、凄まじく白熱し、そして消耗した準決勝が終わった。消耗したというか……色々あった。ありすぎた。


 結果は丸男がトップでゴールを切り、僕らの勝利と相成ったわけだけど、この勝ちは相手チームのアヤさん、コニーさん、そしてカワミナミさんに支えられての事だ。支えられて……そして託された。


「……」


 であれば、もう僕らに迷うことは無い。次の相手が、カワミナミさん達をどんな汚い手段で負かしたのであれ、思わぬ伏兵がいるのであれ、それすら最早どうでもいい事だった。決着をつけてやる。僕の頭の中はさっきからその言葉だけでいっぱいであるわけで。


「ムロト大丈夫?」


 そんな頭沸騰状態の僕に、さりげなく声を掛けてくれたのは、やはりサエさんだったわけで。もう僕らの控室みたいに使っている地下の医務室で、ベッドに腰かけてしばしの休息を取っていた僕は、思いつめたような顔で部屋に入ってきたその紫色の革のライダースーツを着込んだサエさんをぐっ、と見返し、そして力強く頷いて見せた。それを見たサエさんは、僕の肩にその拳を付け、気合いを入れてくれる。


「ムロっちゃあん、問題の相手チームなんだけどぉん……」


 と、ジョリーさんもスマホをいじくりながら、どやどやと室内に駆け込んできた。決勝の相手は一体……?


「……メンバー変更だってぇん。だから誰が出てくるのかまだ分からないのよぉん。元老ってことは確実と思うけど、残り6人のうち誰が来るのか? それはわからないわぁん。ってゆーか、分かったとしても面識ない6人だから意味ないんだけどぉ」


 怪しい。けど、アヤさんとか、ミロちゃんとかから話を聞かされていた僕は、相手が誰なのか、薄々、いやほぼほぼ分かっている。


「……そろそろ時間ですよね、行きましょう。アオナギさん、トウドウさんは?」


 あの二人の姿は、ここには無い。僕がある「頼み事」をしたからなんだけど。そろそろ終わってもいい頃じゃないかな?


「ばっちぐーよぉん。仕掛けは準備万端。でもこんなのって初めてー。ムロっちゃん、アナタってば本当に面白いコ。これ終わったら、ほんとにアタイの店に来なさいよぉん。正規に雇っちゃうわよぉ」


 そう、ジョリーさんは言ってくれるけど、これからの事は分からない。そして今は次に控える「最後の対局」にだけ、集中したいと思っている。僕はでも、そう気遣うように言ってくれたジョリーさんに、にこりとして見せる。本当に、あなたには感謝していますよ。


「……」


 そろそろ時間だ。僕はサエさん、ジョリーさんを促すと、医務室を出て、グラウンドに向かう。


 最後の、最後の戦いの場へ。

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