#227:盗人上戸な(あるいは、モースト・デインジャーの夜)
そんなこんなで、僕とアヤさんもあえなくコースアウトと相成ったわけで。何というか、決めるべきところで決まらないのが、僕のクオリティ限界なのであって。
「……」
尻から人工芝のグラウンドへと軟着陸した僕だったが、アウフと声が出るほどの衝撃だったものの、逆にそれだけで済んだとも言える。それよりも、僕の腕の中で小刻みに震えているこのヒトに怪我をさせなくて良かった。
「む、ムロト選手、ハツマ選手っ、揃ってコースアウト、失格、なんだからねっ!!」
サエさんもこの展開についていくのがやっとだったようだ。困惑したかのような実況が為される。まあ、僕の方を刺し貫かんばかりの眼力で見据えてはいたけど。これは後でお仕置きサブミが待ってるね。それはともかく、勝敗の行方はっ、一体どうなってしまうというのか!?
<岬くん、聞こえますか?>
と、僕のヘルメット内に、まだコース上で滑走を続けている、コニーさんの声が響いた。まともにその言葉を聞いたのは多分初めてだったけど、何か、そのカウガール的な派手な見た目からすると、極めて自然な女子の喋り方のように感じた。
<……ミロを救ってくれてありがとう。それで、ついでに言いたかったのは……私も『
コニーさんの声は、涼やかに笑っているかのように聞こえた。
<だから、岬くん達に託す。アヤの、ミロの、ジュンの、私の、そして全てのダメ人間の人たちのために、決着をつけて、ね?>
コニーさん。僕のダメ力は既に枯れてしまったけれど、やりますよ。絶対にやります。元凶の野郎に一矢食らわすことぐらい、やってやれないことはないはず!!
「……」
何も言わず、僕は右手の親指を力強く立てると、コース上のコニーさんに向ける。コニーさんはそれを認めると、かわいく手を振ってくれた。そして、
「お、お、お!?」
未だどたどた走り(滑り?)で周回していた丸男の背中らへんにくっつく。瞬間、青白い光を放つ、コニーさんと丸男のローラーヒーロ―。凄まじい加速が、二人を前へ前へと運んでいく。
「お、お、オバヒエスト!!」
やっぱり出たか、最上級。丸男はコニーさんに押される恰好で、アクリル足場のコースを高速で周回を重ねると、そのまま七周目のゴールへと飛び込んでいった。
「け、決着っ!! 勝者『チーム19』っ!! 決勝進出、なんだからねっ!!」
僕らの勝利。でも浮かれるわけも無いわけで。皆に託された思い、それを背負って、後はぶちかますだけだっ!!
「アオナギさんトウドウさんっ!!」
わけも無く、チームメンバーの二人の名前を叫んでしまう僕だけど、気合い入れろっ!! 次こそが最後!! 正真正銘、最後の戦いっ!! ぶち壊してやるっ、全部をぶち壊してやるんだ!!
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