#194:無理目な(あるいは、上から撒き餌)
対局者6名の着手が終わり、明暗がいやというほどはっきり分かれた評点≒エネルギーが白日のもとに晒されている。
<●キサ=オー:75% ― 〇トウドウ:12%
▲ギヨ=ヨ :82% ― △アオナギ:23%
■ミズマイ :97% ― □ムロト :91%>
これ、純粋なDEP勝負だったら三タテだよ。「DEP戯王」であって本当に良かったよ。いや待て待て、依然/全然良くはない。これ、こっちは手足をふん縛られたまま、殴り合いやるようなもんじゃないの? ここを凌げないともちろん次は無いのだけれど、この窮地を乗り切る術も全くもって思い浮かばない。
<……こっちはちょいとばかし追い込まれた感ある状況だが、まったく手も足も出ねえってわけでもねえ。少年、諦めるのは全然早いぜ>
僕の心を読んだかのようにアオナギがそう、力強い言葉を吐くけど、ほんとに勝算あるの!?
<……結局はよお、周りの水に落ちなけりゃあいいんだろぉ? 結局は電流食らってもケツを浮かさなけりゃあいいんだろぉ?>
丸男も余裕そうな口ぶりだけど、ほんと何でそんな泰然としてられるのか分からないよ。まあ、ある程度は電流に対する耐性があるみたいなこと嘯いていましたけど。それだって、「相手の拳が当たってる間流されてる10,000ボルティック級の電撃」に、そうそう耐えていられるとは思えないわけで。
こっちがもしエネルギー切れに陥って、移動も出来ない状態でずっと相手に拳を押し付けられていたら……あかんあかん、ケツ浮く浮かないよりも、心の臓の方が耐えきれない可能性あるよね?
<案ずるな、少年。お前さんは俺らが体を張って守る。奴らは完全に様子見の安全策に走ると見た。勝利を確信した人間は、自分でも意識せずに自身にストッパーを掛けちまって、必然ぬるい行動を取っちまうもんなのさ。その隙を……突け……っ!!>
アオナギのいつもの思わず納得させられてしまうような「ちょっといい格言」めいたその戯言だけど、僕にどうせいと!?
<このロボットバトルには致命的な欠陥がある。エネルギーなんぞ、実は飾り程度のものに過ぎねえんだ。だから俺と相棒はわざと低い点を叩いて、相手の油断を誘う撒き餌として利用した……>
ほんとかな? ほんとなら僕も騙されていましたってことになりますが。
<お前さんは瑞舞との決戦に備えろ。タイマンまで持っていってやる。それでそれから後は、少年、お前さんのダメ力に賭ける。存分にな>
ダメ力だと? ……いやいや、タイマン? そこまでもし持っていってもらったとしても、そこから勝てる気が微塵もしないぃぃぃ。
<……案ずるなよ。お前さんはこの二日で成長し続けている。元老のやつらがびびり上がるほどにな。てめえの中心にてめえがいる状態の少年なら、必ず勝てる。てめえに委ねろ、体とか思考とかは、そうすりゃ自然についてくる>
名言を湯水のように生産し続けるアオナギだけど、「てめえの中心にてめえ」という言葉には僕も実感がある。よし、信じて……いっちょやってみよう。どの道、それしか無いんだし。
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