#193:非現実な(あるいは、チャンネル36に合わせて)
<……何回でも言うが、持ってる奴ぁ違う。違うってことだぜ、わかるか? 元老さんたちよぉ>
耳元のインカムより、アオナギのくっくという笑い声と共にその傲岸不遜な煽りが漏れ聞こえてくる。
「持ってる奴」……僕は果たして何を持っているというんだろう。苦悩か? 葛藤か? いかんともしがたいこの体と、持て余し気味のこの心か? ……なんて。ダメってことだよね。僕は幾多のダメなものをぶら下げているってことだ。それはもう分かっている。そしてそれでいいじゃないかと思い始めてもいる。
ほぼほぼDEPを放出し尽くしたと思ったこの体からも、まだ出るじゃあないか。いちばんでっかかった体の奥底にずしりとあった黒い玉はもう先ほど吐き出せた。それがつっかえになって出てこれなかったDEP達がいま、堰を切って噴出しようとしているのか? それは分からない。でも分からないままでもいいと思ってる。
「……」
このアクリルの盤面の中央に僕がいて、この球場の中心に僕がいて、この世界のど真ん中に僕がいて。……僕のまん真ん中に僕がいる、そんな感じ。頭のてっぺんから、爪の先まで、芯の通った、そんな感じ。僕の世界の中心に僕が気負いなく立っている、そんなイメージを今、ふつふつと感じているんだ。
<6th:ミズマイ:着手>
ディスプレイには最終着手者である、SGDM(スーパーがんばりやダメマイスター) (らしい)ミロちゃんの名前が表示される。ふっ、でもね、今の僕には何ぴとたりとも敵わないと……そう、思うよ?
「わ、私の名前……『
か細い声だ。それでも必死にDEPを紡ごうとするその姿……なるほど、純粋天然のアイドルっていうのは、彼女のような天性ものなのかも知れない。でも、名前ネタはね……いける時もあるはあったんだけど、大概やっちまってたよ? 忠村寺(#72)とか、レーゼさん(#74)とか。
「ち、父親がどうしても男の子供が欲しかったらしくてっ、『
さ、サブロー!? こ、こんな可憐な感じの女の子に……ち、父親っ!! 何考えてんだっ!? ……あ、まあ、僕も人の親のことは言えないけど。と、まだこの時点では余裕でいた僕に、次の瞬間、強烈な一撃が見舞われるわけで。
「……」
場は急にしんとなったかと思うや否や、その真空空間に打ち寄せる大波が如く、歓声とおたけびが入り混じったかのような爆音が、うねりとなって突然沸き起こった。え、いや、まあ名前ネタとしてはかなりのものだと思うけど、そんなに!? 僕の余裕ヅラもそこまでだった。
<6:ミズマイ:97,840pt>
で、出た、僕を軽く超える評点!! そ、そうだよ、僕らはいつの間にか忘れていた!! いつの間にか軽視していた!!
<……ありゃあ、初摩だ。幼き頃の初摩アヤを見ているようだぜ……>
アオナギの珍しく切羽詰まった声が聞こえてくるけど、そうだよ、「萌え」!! この馬鹿にならない要素をすっかり忘れていた。だって今まで大した使い手がいなかったのだものぉぉっ!!
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