#160:提案な(あるいは、君と僕とで)
<ムロト:3,388pt>
今のつぶやきがDEPにカウントされてしまった僕の評点は、たったの四桁。「防御」を選択したから1.5倍の恩恵が受けられるものの、まったくの焼け石に水状態だ。相手は7万超えだし。
「……」
あっさりと今回の負けが決定してしまったけど、その辺のことはもうどうでもよくなっている自分がいる。翼……本当に翼なのか? だとしたら何でこの場にいるんだ?
「勝者ミリィ選手!! ムロト選手の『胴』に『900クラッシュ』がブーストっ!!」
「!!」
あ前言撤回……どうでもよくは無いひぃぃぃぃっ!! 左肩に殴られたような衝撃と震動を食らって僕は一瞬のけぞってしまうが、バランスを崩して倒れることは何とか耐えた。
これ結構痛い。低周波で腹筋とかを鍛えるやつ並みの内に来る痛さ。というか、もう低周波そのものも流されてるんじゃないか? 二の腕辺りの筋肉が自分の意思とは無関係に収縮したのを感じた。
いや、それはひとまず置いておくんだ。ミリィの、ミリィの正体を見極めないと。
「……」
僕の左前方で力を抜いて佇むかのように足場に立っている銀色の眼のミリィは、先ほどの僕の指摘に一瞬、表情を歪ませたものの、また無表情に立ち返っている。まだ確定は出来ていない。もう少し揺さぶるしかない。
「翼……その顔とか、どうしたんだ? ……どうしてここに……」
僕は再び問いかけようと口を開くが、
「ムロト選手っ!! 着手時以外の私語は慎んでくださいっ!! それ以上言葉を発しますと、ペナルティとしていずれかの部位をクラッシュさせますっ!!」
リアちゃんの鋭い声がそれを遮った。ぐっ……もどかしい。生き別れたきょうだいかも知れないのに……っ!! ろくに会話することもままならないのか……っ!!
「……提案が、ある」
僕のその心の叫びが届いたのか、ミリィは静かに実況少女リアちゃんの方へ目を向けると、そう切り出した。
「!! ……なんで、しょうか……ミリィ選手」
リアちゃんも元老院には私語ペナルティ取ろうとしないのね。くくくくやしいぃぃぃ。と、僕の忌々しげな顔も全く意に介さず、その黄緑実況少女は、銀髪の少女(?)を促した。
「私とムロトのデスマッチ方式を要求する……どちらかが滑落して水没するまで一対一で殴り合う形式……お互いの平常心を揺さぶり、乖離率が100%を超えた時点で1クラッシュをリアルタイムで喰らう……本当の殴り合い形式を望む……」
声も表情が無いミリィだが、その内容は過激だ。デスマッチって……、やばそうな空気しか感じないよ。
「……りょ、両者の同意が取れれば……特にルールに反することはないですけど」
リアちゃんがそうのたまうけど、反することないんかーい。ガバガバだ。その辺のルール周りはガバガバだ。まあそうでしょうよ。
薄々感づいてはいたけど、改めて思い返してみると、これまでもルールなんてあってないような物だった。しかし僕の同意……僕は、どうしたらいい? いや、どうしたいんだ? 自分の意思で、決めないと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます