#152:双丘な(あるいは、ハイパーアザトイストの午後)

「DEP戯王とはっ!! 様々な効果を持つカードを使用しっ!! 攻撃・防御の駆け引きを織り交ぜながら相手のライフを削り合う、白熱のカードバトルのことでありますっ!!」


 実況自体は極めてオーソドックスなリアちゃんであるのは予選の時から変わらないのだけど、やはりその奇天烈な恰好の方に目が行ってしまい、内容が頭に入って来ないよ。もうこういう事やめようよ、とは前々から思っているものの、本人たちは一生懸命なだけにおいそれと言うことは出来ないわけで。


「各人、対局開始時に5枚のカードが配布されます!! そして1ピリオドごとに手持ちのカードから、各自1枚のカードを場に提示してもらいます。この時、そのピリオドで自分が『攻撃』を行うか、『防御』を行うか、カードの向きで示していただきます。すなわち、縦に置けば『攻撃』、横にすれば『防御』を選択したと見なされるわけです。カードにはそれぞれ攻撃力・防御力の数値が記載されており、これが戦いの鍵を握ります。『攻撃』を選択した対局者の内、攻撃力の小さかった者から順に、攻撃を行っていきます。攻撃者は、自らの対象となる相手を指名しますが、指名できる相手は、『攻撃』を選択していようが『防御』を選択していようが、どちらでも構いません。ただし『防御』選択をした者は、DEPに無条件で『1.5倍』の補正が受けられるので、そこは留意願います」


 つらつらとリアちゃんの説明は続くものの、何だろう、いまいちピンと来ない。脇の二人をちらりと見やるものの、まあ恒例のポカン顔だったわけで、うん、ここまではいつも通りのニュートラルだ。OKOK。


「……指名を行った攻撃側から、DEPを撃っていただきますが、今回の評価者は何と! 10,000名の一般のお客様、皆様ですっ!!」


 そこでマイクを持っていない左手を高々と上げ、会場ぐるりを見回すリアちゃん。その見事に強調された胸元の切れ込み鋭い双丘に目が引き付けられたのか、会場からは野太い声が降り注いでくる。成功だよリアちゃん。少なくとも男共の支持は確実に爆上げ状態だよ。その良し悪しは今はさておいて。


「評価者の持ち点は『10pt』!! なので、最高評点は『100,000pt』となりますっ! わかりやすいですねっ」


 言いつつ、ピンと立てた人差し指を自分の頬の所に持ってきてウインク。同時にぴょんと軽く跳ねて胸を揺らすリアちゃん。うーん、何か実はこなれてる? そのあざとーな仕草に、僕はちょっと引き気味だが、それと反比例するが如くに会場のボルテージはごんごん上がってきているわけで。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る