#153:九龍な(あるいは、9th無いんす)
「各々のライフは『9つ』の部位に割り振られています。両手!! 両足!! で4つ。残る5か所は、胴体部分の、両肩・両胸・真央に当たります。手持ちにするカードには、基本、『胴』『手』『足』の3種類の『攻撃対象』が書かれていまして、『攻撃』を選択した場合、相手のその部位への『クラッシュ』を狙うことができるわけです」
「クラッシュ」……物騒な言葉が出てきた。ライフが9個ということは分かった。それを攻撃して奪っていくということも何となく理解できた。しかし、そのライフが無くなることイコール何につながるというのだろう?
「対局者のデモンストレーションを行いますっ」
リアちゃんがその手の錫杖を掲げると、壇上に小太りの男が黒服ふたりに両腕を掴まれながら引きずり出されてきた。その上半身には何やら物々しい銀色の鎧のようなものが着せられている。またこの制裁パターンか。先ほどの対局前に行われた痩男への仕打ちを思い出し、僕は今回の太男に対しても憐憫の念を禁じ得ない。
「対局者は斜度30の足場に、『クーロンズアイズ・ナインス・ドラグゥン』の恩恵を受けて留まることを許されます……」
何か重々しい口調でリアちゃん。斜度30ってかなりの角度だよね。あの滑りやすいアクリル足場で「留まる」っていうのは難しいのでは? 僕がそう思っていると、太男はその足場に上げられ、そこに渡された二本のレール上に固定された装置に両足を差し込まれた。
足場の後方には先局の「阿修羅像くん」のようなオブジェ的なものが設置される。龍を模したかと思われるその像からは、何本かのワイヤーのような細い線が伸びている。
黒服の手によってそれらワイヤーが太男の体に取り付けられていき、最後に握り手のついたワイヤーを太男の両手に握らせると、黒服たちはそのアクリル足場から退散していった。
「それでは角度、上げてくださいっ!!」
リアちゃんの合図で、アクリル足場はじりじりとその斜度を上げていく。30度っていうと、決勝初戦(メゴ・カオ・リポ戦)で滑落限界だった角度だ。今回はいきなりそこからってわけで、つまりどういうこと?
「……」
斜度30と思われる角度で、足場は停止する。太男の体も足場に留まっているが、なるほど、両手は握り手付きワイヤー、両足はレール上の装置で固定、プラス両肩・両胸、そして体の中央から背中側に伸びたワイヤーによって繋ぎ止められている。
それらワイヤーは太男の背後の何とかという龍の像に繋がれているということは、うん、何となくわかってきた。わかってきただけに、この後に控える例の惨劇にも内心、恐々としてきたわけで。
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