#140:弾劾な(あるいは、贖罪エロファンタ)

「『バヌアツ=ガッ=フィィィィングァァァっ!!』」


 阿修羅像くんの赤熱した掌は張り手のように打ち出されると、寸分たがわず獲物たちの臀部へと押し付けられた。


「は熱ぁぁぁぁっっ!!」


 タメイドは2,000弱のポイントだったので、まだその焼きごて状の掌を瞬間、尻たぶに接触させられるだけで済んだようだが、


「がっ……!! がっ……!! がっ……!!」


 ヤブ=シの方は20,000超。よって、かどうかは不明だが、阿修羅像くんは執拗に当てるポイントをずらしながらの連撃を、犠牲者の尻のあちこちに食らわしている。


 見た目の地味さに反比例するが如く、その威力は計り知れないほど恐ろしいよ、最大奥義っ!! 悲鳴を上げながら身体を断続的にびくつかせるヤブ=シだったが、


「……」


 遂に白目を剥くと、バーにもたれるように崩れ落ちた。敵ながら哀れみの念を禁じ得ない。だが無情にもその身体を乗せた直方体の装置は、乗り手の尻が座席から離れた瞬間から、滑落を始めているわけで。


「……!!」


 もはや気絶しているのか? 止める術は無く、先刻の副議長同様、ヤブ=シの体は宙を一瞬泳いでから、毒々しい黄色の沼へと突っ込んでいった。


「ヤブ=シ……戦闘不能」


 桜田さんの驚愕したような呆れたような声が会場に響き渡る。


「……淫獣モードに移行したムロトは、もはやお前さん方、元老院風情がかなう相手じゃねえんだ。為井戸新四段よぉ、今ここで諸々のことを認め、ワビを入れるっつーんなら、棄権することを許さんこともねえが……どうする?」


 アオナギがタメイドを指差しそう宣告するが、「諸々のこと」とは……?


「何……だと?」


 タメイドの常に微笑を絶やさなかったその上っ面が、初めて怪訝そうに顰められた。


「このことだよ」


 トントンと指先で自分の首元のコルセットを叩きながら、そして丸男の頭に巻かれた包帯を指さしながら、アオナギはタメイドの目を覗き込むようにしている。


「何……のことだか、さっぱりですねえ」


「おうおう、それ以上は言葉に気を付けた方がいいぜ。何しろ嘘をついたと認識された時点で、えびぞるレベルの電撃が来ることぁ、先刻ご承知だろうがよぉ」


 もって回ったようなアオナギの言い方だが、なるほど、嘘発見機+電流炸裂装置が、忘れがちだけど、僕らの体には常に取り付けられているわけで。東北でのあの追突事故の一件……それに決着をつけようとしている?


「……」


 タメイドの顔が固まる。畳み掛けるようにして、


「嘘こいたらそこで失格だ。俺ら的にはそれでも構わないが、あくまで白を切り通す腹なら、それはそれでこっちにも考えがあるからよぉ、これからの言動にはよぉっく、気ぃつかってくれや」


 アオナギの静かな、しかし迫力が滲み出る言葉が響き渡る。そうか、アオナギはこの、タメイドがひとりになる瞬間を狙っていたんだ……だよね。と思うけど、たぶん。


 覚悟だタメイドっ!! お前はもう、完全に包囲されているっ!!


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