#102:英雄な(あるいは、ロマンシングの神様)
時刻は9時を少し回ったところ。無事エントリーを済ませた僕たちは、外野フェンス際に設置された四本脚のテントの下、支給されたパイプ椅子で車座になり、作戦を立てようとしている。
予選の時にはアクリルブースが設けられていた所だ。決勝にもなるとやはり待遇が違うものなのかーと思いつつ、僕は外野ぐるりを巡る色とりどりのテントの下で待機する敵チームを観察していた。そう、もう完全に「敵」と認識した方が良さそうだ。向こうがガチにやってくるというのなら。
「……決勝トーナメントは、うまく説明できないんだが変則パラマス式とでも言うのか?山が大きく二つあって、片方はまあ普通のトーナメント形式なんだが、もう片一方、俺らが属する方は、勝ち抜き戦みたいなイメージだ。こいつを見てもらった方が早い」
アオナギが僕らにスマホの画面を差し出す。なるほど、勝ったチームに次々とシードが当たっていく感じ……つまり僕ら最下層の6組優勝者がトーナメント決勝まで勝ち上がるには、5連勝が必要となる。この時点でかなりきつい雰囲気を醸し出していますがな。
「出場する元老院の面子について、アタイなりに調べてきたことがあるから聞いてねぇん」
ドラッグストアに走って喉の痛みにいちばん効くとの錠剤を買って来てくれたジョリーさんが、年季の入った革カバーの手帳を取り出す。ナイスセコンド。昨日の予選終わりに無礼なことを色々思っていてサーセンでした。
「『元老院は22名の有段者によって組織される、
……いきなり物々しいな。そして結構人数いるんですね。
「『……元老院に属する者は、それぞれ元老名を振り分けられ、それを名乗ることが許される』」
……それ許されるほどの事なのかな。まあダメ界の諸々に突っ込んでもこっちが怪我するだけだから何も言わない。
「『……その元老名は山手線各駅の駅名を逆から読んだものをモチーフとする』」
何で? 理由を聞いても怪我を被るのでダメなんだけれど何で。そしてモチーフて。
「『……よって、全29駅より、やんごとなき理由により欠番となっている次の各駅を除いた22駅を元老院を構成する各々に冠する。欠番:品川、上野、池袋、新大久保、新宿、恵比寿、五反田』」
いやもうええわ!! ワケわかんない度合いが増しただけで、ちっとも元老院の姿が見えてこないじゃないか。
「……B1に上がったくらいの時に、一度は俺も推挙されたんだが、丁重に辞退したぜ。奴らに良いように飼われるような感じがクソ気に入らなかったし、何よりその元老名が『ウチョ=ツママハ』だったしな」
アオナギがつまらなさそうにそう言うが、よりによってそれじゃあねえ。絶対名乗りたくない。
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