夢のような夢でも覚める時は覚めるし違うところは違う。

@Wisyujinkousaikyou

ある日の夢

「ケンちゃん! 何ぼーっとしてるの?」

とってもお洒落な服を着て僕の手を引っ張ろうとする【カノ】。

一見よくあるカップルの光景のようだが、今僕の目の前の光景としては異常事態。

何せカノは僕の絶賛片思い中の隣の席の女の子。

「ほら! ケンちゃん! 次はジェットコースター乗ろうよ!」

カノはついに僕の手を引っ張り出した。

訳が分からない。

あ、ここ遊園地なんだ。

確かに周りに沢山の乗り物があるな。

でもあれ? このメリーゴーランド近所の遊園地のじゃないか? と思ったらあそこのコーヒーカップはこの前旅行先で行った遊園地の物に似ているな。

「さ! ケンちゃん! 乗ろう!」

彼女はほぼ無理やりに僕を隣の席に乗せる。

あれ? 僕ジェットコースター苦手なんだけど……。

というか、誰も乗ってないジェットコースターなんだな。

よく見たら遊園地にしては客もいないしキャストもいない。

そうか、これは夢なのか。

じゃあジェットコースターも問題ないな!

「さぁ、来るよ来るよ!」

あぁ、なんだかカノ、すごく楽しそう。めっちゃ可愛い。

「きゃぁぁぁぁぁ!」

はぁ、腕に抱きつかれても夢だから感じない……温かい?

あれ何で!? 夢だよね!?

そしてなんだか女の子って柔らかいな……。

JKってこんな感じなんだ……。

「イエーイ!」

ふぅむ、少しスピードが落ちてきたせいでカノが離れちゃったじゃないか。

あれ、これ今僕とカノってどういう関係なんだろう?

「ケンちゃん! 楽しい! やっぱり初デートは遊園地よね!」

……カノは今僕の彼女らしい。

じゃああれか? 夢の中だけど彼女いない歴=年齢に終止符を打ってもいいのかな?

「さて! 次はケンちゃん何したい?」

確かによく小説とかにあるジェットコースター乗るシーンの後ってなんだかんだでカットされ気味だから良く分からないよね。

アニメとかだと……そうだな、お化け屋敷が一枚絵で出てきたりしてるな……。

「お化け屋敷!? ……ちょっと怖いけどケンちゃんとなら……」

まて、かわいい。

なにこの生き物。目はクリっとしてるし鼻も口も綺麗に整ってるし、身長は俺と十五センチ差でめちゃめちゃいい感じだし。

まぁ、あれだよな。 現実と違うところは明らかにカノが僕の事を好きになってることだよな。

僕なんか現実じゃ、嫌われ者の部類に入るような人間だからな。

「うわー……怖そうだね……」

あれ、もう着いたの。

そっか。夢だから歩く感覚もないわけだ。

よっしゃ、またカノに腕掴まれてるぞ。

「うぅ……足がすくむよぉ……」

頑張れカノ!

君ならでき……ほんとにこれ夢なのか? 温かいし、柔らかいし。

いやでも、こんな無人の遊園地無いし……。

はぁ、なんだか覚めないでほしいなこのまま。

だって、地球が炸裂するレベルの奇跡が起きてカノと僕がカップルになっても、現実感わかなくて一切話さなくなりそうだよね。

彼女なのに緊張するってダサいんだけど、付き合う前って本当にそういう不安もあるよね。

そう考えるとただ眺めてるだけでもいいのかなって思っちゃうよね。

でもまぁこうして腕にしがみついているカノを見てると、全てが関係なく見えてくるよね。

恋愛ってすごいな……違うわ。カノがすごいんだ。

「はぁー! やっと出れた!」

カノの清々しい顔を見て思った。

やっぱり自分の力でカノをおとすしかないよね。

たとえ夢の中で何度シュミレーションしても現実は何も変わらないもんね。

「ねぇ、次はどこに……」

カノや遊園地が一気に遠ざかっていく。

ここは……。

見慣れた内装の白い部屋。

僕の部屋だ。

やっぱり現実見ると夢に逃げたくなるけど……。

「畜生! 最高の目覚めだぜ!」

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