「微妙な収穫だな」「まだ地下が残ってるぜ」

「…………お、こっち側、扉があるぜ、ここだな」


アルバート達はランタンの明かりを頼りに隠し通路を進む。

しばらくすればアルバートは扉を見つけ、それを開く。

ランタンが照らすそこには古ぼけたロッキングチェアとミニテーブル。

後ろには棚があり、ガラス戸棚からは精緻な装飾がされたティーセットが見えた。


「どっかに鍵が置いてあったりは……お、あれじゃね?」


ランタンを壁に向けて照らしながらアルバートが注意深く確認すれば。

杭にかけられている鍵を見つけだせたる。


「こっちの皿は……磨けば、好事家に売れるかな? 頂いてしまおう」


「アル君に空き巣と言ってる割にも自分もするんだな」


「まぁアルも言った通り、ここで腐らせるのもよくないでしょう」


「棚の下のスペースは……ね、ネズミ!? あたっ、いやぁ!」


エドモンドが棚のティーセットを物色しながらその下でサティが収納スペースをのぞき込んでいると、頭を棚にぶつけながら、這いずり出てきた。

そのあとから、ちょろちょろとネズミが出てくる。長い年月を経て、この棚は彼らの住処になっていたのだった。


「ネズミ、嫌いなんだね、よしよし怖かったね」


「うう~、ネズミだけはネズミだけは駄目なんです」


「ほんじゃま、これで全部かな、とっとと下に行って鍵を試してみようぜ」


エドモンドはサティを慰めつつ。アルバートの後をついていく。

隠し通路を出て二階から一階へ、開け放していたドアから夕焼けが4人を照らす。屋敷を調べている間にとっくに夕方になっていたのだ。

その夕焼けを見てかアルバートが腹を鳴らす。

その腹の音を聞けばエドモンドが最後は戦闘になるだろう事を考え。

消耗したマナを回復すると同時に腹ごしらえを提案するのだった。


「ふぅ、大分いろいろ見つけたな、へそくりにマギレプリカの部品、宝石に魔動機についての本とティーセット、地下には何が隠してあるかねぇ」


「手記によれば魔法道具がしまってあるはずだよ、まぁ、その前に魔動機と闘う事になるんだろうがね」


エドモンドが魔香草の葉巻を紫煙を吐きながらアルバートの疑問へと答える。

ウディグリスによって焚かれたそれはマナを急速に回復させる効果がある

サティも同じようにしかし、エドモンドとは別に入れ物からの煙を吸うようにマナを回復させていた。


「値段の方はいくらになるだろうか?」


「この数ですと、2000ガメルは超えるかと。」


「ボビンにいくらか色が付けられることは無さそうな微妙な収穫だな」


「まだ地下が残ってるぜウッディー、飯も食った、二人のマナも回復した、準備は万端、いざ出陣だ」


アルバートが地下への扉のある部屋へと入り鍵を使えば。それはすんなりと入っていき。重々しい音と共にその扉は開かれる。ランタンの明かりが頼りないと思えるほどの暗闇をアルバートは慎重にゆっくりと降りていく、一段一段、しっかりと踏みしめながら、やがて、一番下まで降りてきたのだろうか。少し開けた場所に出る


「4人はまだ来るな、ここの家主だ、ここにも罠があるかもしれん、俺が調べてからだ……うぉっと、へへ、落とし穴だなんて、そんな古典的な罠に……っげ。

畜生ッ、二段構えのトラップとか反則だろ、あっぶねぇ~、喰らう所だったわ」


一度は落とし穴の罠を見破りそれを華麗に回避して見せる。

更に着地した先にスイッチがあったのか暗闇から矢が飛んでくるも、辛くもこれを避け切る。アルバートの気合が勝ったという所だろう。


「おいアル君、後ろの扉なんかひしゃげ始めてないか……」


突如、扉が破壊される音が響く、そこにあったのは1mほどの子供の人間のような姿をした物だった。そう物である、それはずんぐりむっくりした丸いフォルムで全身を鉄で覆われ。片手がハンマーで作られている。


「罠が反応したから、魔動機も動き出しやがったのか、戦うぞ」


「そのようだな、私がカバーする、エド君、あいつは一体なんなんだ?」


「後方20m先にも敵影を確認、同型の何かと思います。ご主人様、心当たりは?」


アルバートが駆け出し、落とし穴を飛び越え鉄の何かへ体当たりしその勢いで

部屋へと全員でなだれ込む。部屋には扉を壊した鉄の何某がもう4体、全部で5体だ。そして更に暗闇でサティにしか見えないが。後ろには彼らを更に大きくした鉄の塊。両の腕がハンマーになっている物が佇んでいた。


「ドルンですね。サティの言ってるのは同型ならおそらくブルドルン。どちらも

ドルンシリーズと呼ばれる魔動機文明時代の魔動機としては長年愛されてきた傑作ですね、街中で見たことないですか? 今も結構な数が稼働してるんですよ」


「そういや、見たことある感じの面だなこいつら、あれ魔動機だったのか。

講釈なら、後でたっぷり聞いてやる。どう戦う」


「こいつらなら僕に分がある、僕から行くぞ、…………ジバジガ!」


エドモンドの詠唱が終われば、手の先から小さな稲光が三体のドルンを襲う。

ドルン達はその攻撃を躱すこともできずに正面から受けてしまう。

ドルン達は黒焦げになり。動きが緩慢になっている。今にも壊れてしまいそうといった感じだ。


「ドルンシリーズは電気系統が脆いんだ。だから、過剰な電撃を浴びると、途端にこうなるってなもんさ。アルバートとサティの一撃があれば倒せるはずだよ、数は多いが格下の雑魚、このまま押し切ってしまおう」


「だが、さすがにこの数を一気には厳しいだろう、私は守りを固めたいと思う。

ティダンよ、我々に守りの加護をフィールド・プロテクション」


ウディグリスが自らが信奉する神へ祈れば。4人を光が包み込む。

神聖魔法、フィールド・プロテクションは敵からの攻撃をある程度防ぐ防御魔法だ


「サンキューウッディー。そんじゃ行くぜって、随分硬いな、ま、撃墜だ」


「ここは私の出番でしょうね、ソリッドバレット作製、発射、撃墜成功です」


アルバートが駆け出し。剣を片手で引き抜き、ドルンへと打ち付ける。

なんなく撃墜したが、鉄の体を持つドルンは刃の武器に高い耐性を有しているのも特徴の一つだ。そして更にサティの弾丸もドルンを一体撃墜する。

こちらは鉄の体も何も関係ない、全てを等しく貫く非情な弾丸である。


こうして落とされた火蓋は冒険者優勢で進み始めたのだった























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