「やってる事は空き巣だよね」「それは言っちゃいけない」

アルバート達が遺跡を探索し始めて早1時間近くが経った。


「一階はこんなものかな? 地下は不明、二階に何があるか……」


エドモンドは床に羊皮紙を一枚広げ、遺跡の見取り図を書き記す。

こういったものを残し、探索した箇所やしていない箇所を洗い出すのは重要な事だ

もしも探索漏れでもあれば、更にそこに財宝が残ってるならば、それらは盗られてしまうのだから。


「俺が先行して昇るぜ、ウッディー、エド、サティの順番でついてきてくれ」


階段は一人分の幅しかなく狭い。アルバートの提案通りに4人は昇っていく。

アルバートは昇りきると、頭とランタンだけを少し出して確認する。

広がるのは廊下、そしてドアが二つと窓が二つ。

当然だが窓を開けた所で山に埋もれたこの遺跡には光は届かない。


「何も無さそうだ、廊下は二人位ならいけるかな。上がってこい」


アルバートが手招きすれば、他の三人が昇り切る。

そして、さっそくと言わんばかりにサティがマナサーチを行う、大きさは中。

結果は扉は無反応、しかし二階のどこかに魔法の反応を感知した

おそらく扉を開く鍵、そうじゃなくても財宝であると予想してアルバート達は手前の扉から開き探索を始めた。


「こっちは本棚か? 何か入っているかね? って、交易共通語じゃねぇ、パス」


「僕も魔動機文明語は無理なんだけど、まぁ、本の状態くらいなら……サティは魔動機文明語出来たよね、分担して作業しよう、こっちを頼む」


「拝見いたします」


サティとエドモンドが本を持って読み始める。その間にアルバート達男2人で部屋を探索する。といっても、ウディグリスにその心得は無いので、徒労に。

アルバートは机の中から一冊の手記を見つけるのだった。


「こっちも大方調べ終わった。これらは美品、高値で売れると思う、そっちの方はどうだった? サティ」


「警護用魔動機の機体性能が書かれておりますね、これらもそれなりの値段になるかと」


「ほじゃま、サティ、こっちの手記の方も頼むぜ」


「かしこまりました、こちらはすぐに読み終わりそうですね……」


サティの言う通り手記の方は数分もすれば読み終わった。

中身としては、この屋敷の住人は用心深く、いくつかの部屋に貴重品や装飾品を別けて隠してしまっている事、一番貴重な魔法道具は地下に警護用魔動機を設置して護っておくとする事。カギは例の部屋にしまっておくとする事。


「つまりはだ、鍵を探してそこを開ければ、魔動機と財宝が待ってるわけだ」


「そうだね、くわえて例の部屋……隠し部屋か何かだろうね、この部屋はもう探したの?」


「まぁ、探したけど、この手記以外はさっぱりだ」


「エドモンド君の思う隠し部屋はまた、別の場所にあるんだろうね」


アルバートとウディグリスの言葉を聞き、それじゃぁと4人はもう一つの部屋を調べる事にするのだった。

こちらは寝室となっていた、机といすにクロゼット、安物のベッドといった感じ。

さっそくサティとアルバートは探索を始める。

ウディグリスとエドモンドも一応、調べてみるが。


「うっ、足をぶつけてしまった、やはり狭い場所ではいささか不自由なものだ」


「うわっ!」


「大丈夫ですか、ご主人様、お疲れでしたら一度ご休憩いたしますか?」


「そこまで軟じゃないよ、ただ、不得手な事はしない方がいいね」


ウディグリスはベッドの足に思いっきり足をぶつけ、エドモンドは足をひっかけ転びそうなところをサティに支えられる始末であった。


「お前らなぁ……お、また箱みっけ、案の定鍵付きか……いや、罠がかかってるな、毒針か、小癪な真似を……うっし、開いた! 中身は……お、宝石だ!」


アルバートが二人に呆れながら、部屋の中を調べ続ければ、クローゼットから。

下にあったのと同じような箱を見つける、先ほどと違って、毒針が仕込んであったが、アルバートはそれも意に介さず、箱の中身を空けて手に入れる事に成功する。


「やってる事は空き巣だよね、僕ら」


「それは言っちゃいけない、宝だってここで放置されてるよか俺達に使われる方が本望だって、しっかしルビーか中々綺麗な赤色だな……っと、お宝は見つかったけど、例の部屋ってのがまだ見つからねぇな」


「ふむ、どっちの部屋も調べ終わったな?」


「まぁ、一通りはな、やっぱ見落としがどっかにあるのかね」


「そうかもしれないな、通路とかはどうだ? 詳しくは調べてないだろう」


「そうだな、そっちを調べてみるか」


ウディグリスの提案と共にアルバート達は廊下へと出る。

廊下もやはり薄暗く、ランタンの照らす明かりだけが頼りだった。

そんななか最初に気づいたのはこの暗闇でも自由に視界が通るサティだった。


「皆様、こちらの壁の先に風を感じます、おそらく隠し通路があるかと」


「でかした、隠し扉って奴だな、あ、壁だから隠し壁? とにかく行こうぜ!」


「そうだね、とりあえず押せば開くかな? ……むむ、びくともしないな、では引いてみるか? それもダメか、一体どうなってる?」


ウディグリスが壁に手をかけ、押したり引いたりしてみるが、壁はびくともしない

そんな中、エドモンドも壁を調べ始める、といっても彼は探索は不得手だ。

しかし、不得手だからこその偶然ともいえる幸運がエドモンド達の道を開いた。


「あだっ!? ……ん、これもしかして」


エドモンドも調べ始めるが老朽化した廊下の凹み部分に脚を獲られ、転んでしまう。しかし、転んだ先、突き当りの壁の床との接地面を見て気づく


「これ、もしかして、持ち上げるんじゃないか? ほらここ、取っ手がある」


立ちあがったエドモンドが壁と床の接地面の当たりを指差した場所には確かに人間の手が入るくらいの隙間と取っ手がついていた、それをみたアルバートがすかさず、手をかけて持ち上げれば。壁は難なく持ち上がり。その先の通路を見つけた。


「押すでも引くでもなく持ち上げるだったのか、ここの家主はひねくれものだな、友達が少なかったに違いない!」


「災い転じて福となす、お見事です、ご主人様」


「何はともあれ、詰みではなくなったな、お手柄だ、エド君」


「転んだ拍子の偶然ですよ、ですが、ありがとうございます、先に行こう、アル、先頭は任せるよ」


「任せな、それじゃレッツゴー」


アルバートがランタンを持って、先を進む、この先に財宝がある事を信じて。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る