「扉が襲ってきやがった!」「まったくあのバカは」
「扉が! 扉が襲ってきやがった! あっぶな! あんだよこいつ!」
扉に襲われたアルバートだが、襲われた瞬間に大きく飛び退きその攻撃を避ける事には成功した。今はランタンを片手に持って、扉と対峙している。
「まったくあのバカは勝手に突っ走りやがって、そいつはドアイミテイター、魔法生物だよ。魔法文明時代の代物でも物によってはこうして魔動機文明時代の遺跡なんかの罠に使われてる事はよくある事だ。ウディグリスさんはすぐにアルのカバーサティ、こっからアルに当てない様に狙える?」
「可能ですご主人様早速準備します、ソリッドバレット作製」
エドモンドはアルバートに説明しながらウディグリスとサティに指示を出していく
さて魔法生物とは何かを簡単に説明するなら。今から魔動機文明時代より前の時代の魔法文明時代における、魔動機のような存在といった所だ。
魔法文明時代についての言及は必要ではないのでここでは行わないとする。
「くそっ、とにかく反撃だ!」
アルバートがランタンを放り投げようとするが、それはウディグリスに止められる
「アル君、そのランタン、特殊な加工とかはされてなさそうだ。放り投げれば壊れる可能性がある、ここはサティ君に任せてみようじゃないか」
ウディグリスがそう言った瞬間に二人の後ろから弾丸が飛んでくる。
アルバートが後ろを見れば、そこにはガンを構えたサティが立っていた。
ガン、それは弾丸にマギスフィアによって魔力を纏わせ高速で射出する魔動機文明時代に流行った武器の一つだ。盾だろうが鎧だろうがいともたやすく打ち抜くそれはまたたくまに蛮族を駆逐していったひとつの要因でもある。現代でもそれは同じで、冒険者の中にはガンを使う事を好み、それで戦う者が一定数存在している。
だが、ガンは魔動機文明時代の技術と言う事もあって、大量生産はされておらず。高性能の物となれば高額、更に攻撃には弾丸を何個も使う事になるのだ。
「よそみするな、アル! まだ動いてるぞ! 収束せよ、ジバジガ!」
間髪入れずエドモンドがスパークの詠唱を行えば、小さな雷光がドアを焦がす。
本来スパークは敵味方関係なく一定の範囲を雷で焦がしてしまう。
しかし、エドモンドはそれを一体の敵に集中させる【魔法収束】と呼ばれる技術を覚えていた。こうして二人の魔法により、ドアイミテイターは破壊される。
「はぁ、アル、君はいつもそうやって突っ走る癖がある、このまえのジャイアントリザードの時もそうだけど、調べる、用心する、相談する、気をつけろよな」
「わりー、わりー、でもまっ、助かったんだから、よしとして、ほら、罠があったんだから、何か、財宝もしまってあるんじゃねぇの? 早速調べようぜ」
「まったく、これだから……」
呆れながらも先へ進むアルバートの後をエドモンドは追っていく。
「ここは……うぉ、魔物!? って、人形かよ、こりゃ金になりそうもないな」
「いやいや調べてみたら、そうとも限らないぞ」
「そうですね、調べてみます…………あ、こいつマギレプリカだ」
部屋は今まで見たものよりは小さく雑多なものが詰まっている物置といった所だ。
そしてアルバートが見つけ驚いたのはウルフと呼ばれる動物を模した人形だった。
そう、人形だったのだが、エドモンドはそれがただの人形でないことを見破った。それはマギレプリカ、動物を模倣して作られた魔動機である。
「完全に動力部分が壊れてしまっているので動かないのでしょうね、私に見せていただいてもよろしいでしょうか? 魔動機でしたら、私の方が専門です」
サティの提案にエドモンドは乗り、早速サティはマギレプリカを分解していく。
そうして、分解する事30分ほどだろうか、全ての分解が終わった。
「稀少な部分は完全にダメになってしまっていましたね、無事な部分をいくつか
分解しました、これらはおそらくそれなりの値段で売却可能と思います」
「よっしゃ! この調子で隣の部屋も調べようぜ」
「はい、ちょっと待った、隣の部屋を調べるなら、僕の指示に従ってくれ」
エドモンドは先走ろうとするアルバートを首根っこを捕まえ引き留める。
アルバートは情けない声を出しながら足を止めるのだった。
「ちょっと外に出て、石ころ数個拾ってきて。」
「それで、どうするってのさ」
「そりゃ、ドアにぶつけるんだよ」
エドモンドの作戦はこうだった。隣のドアもドアイミテイターと想定して。
4人がかりで石を投げつける、基本的にこういったトラップは近づくか攻撃されない限り動くことは無い、いざ攻撃されて動き出したところで、ドアイミテイターは動きが遅い。下がりながら、石を投げ続ければ、倒すのは容易だとの事。
「さすがの慧眼です、ご主人様」
「中々、面白いことを考えるな、アリだと思う」
「よっと、これだけあれば足りるか?」
サティとウディグリスが関心しながらそう言っているところにアルバートが数十個の石ころを抱えて扉の前に戻ってくる
「うん、それじゃとりあえず適当に離れて、そんでもって一斉に行こう」
結果から言えば成功だった、4人が一斉に投げた石は見事扉に命中。そしてドアイミテイターが襲い掛かってくるはずなのだが、4人はすぐさまドアイミテイターの移動範囲から下がり、石を投げつけ攻撃、近づいてきたらまた下がるをすれば3回目にはドアイミテイターは沈黙するのだった。
「さてと、さっきのドアイミテイターもだけど、魔材が出るかもしれない、しっかり調べてみようか」
エドモンドがそう言いながら、二つのドアイミテイターを調べ始める。
魔法の材料で作られた魔法生物からとれる魔材は貴重な研究資料。
もしくは魔法道具を作る材料に使われる為、それなりの値段になるのだ。
「それが終わったら部屋の中を調べようぜ、またマギレプリカがでねーかな」
さて、ドアイミテイターの素材を回収し終わった(結果はおけらだった)4人はそれが守っていた扉の先へ進み始める。結果は地下へ続く床扉があった。しかしその床扉は鍵でがっしりと締まっており、アルバートでも開けれなかった。
「針金が通らねぇ、アンロックキー持ってるか? 魔法の鍵かもしれねぇ」
アルバートは魔法の鍵かもしれないとにアンロックキーを貸りて開こうとするも。それはやはり開かない。かなり高い魔力によって封じられているようだ。
「おそらく、特別な鍵によって開くのかと思いますが」
「となると、鍵探しだな! こりゃ、貧乏くじじゃなさそうだぜ!」
「この遺跡の中に鍵があればの話だけどね……」
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