「念には念を入れよう」「かしこまりました、マナサーチ、起動」

さて、二日の旅程を経てアルバート達は遺跡のある場所までたどり着く。

さて、魔動機文明時代の建物とはどんなものかと言うならば

石造りの壮麗な多重階層となっているが。


「ものの見事に山に埋もれてるなー、入り口は開きそうかな?」


「これも大破局の影響か、今や見る形もなしといったところだな」


そんな魔動機文明時代の建物も大破局の影響で入り口以外は山に埋もれていた

さて、度々出てきたこの単語大破局について軽く説明するしよう。

正式名称をディアボリック・トライアンフと言う(作中では大破局と称する)

その大まかな内容は当時、駆逐されたと思われていた蛮族による奇襲である。

その奇襲はすさまじく大陸の形さえ歪めるほどの天変地異を起こしたと言われる。

なんでも始まりの剣とされる”イグニス”を蛮族の王が持っていたなんて話もある。

そしてその始まりの剣を持つ蛮族の王が倒されたのがきっかけで戦争は終結する。

終結させた存在が誰かはまったくもって不明、同じように魔剣を携えた英雄か。

はたまたある国家の電撃的な反攻か。真偽は定かではない。まあそれはそれで放置

今ここで重要なのはこれにより、現代では多くの建築物は山なり地下なりに埋もれ

それを探索、調査するアルバート達のような冒険者がいるという事だ。


「調べてみた所、鍵などはございません、入ることは容易かと」


「よっしゃ、それじゃ俺が開けてみっから、三人は何が来てもいいように構えといてくれ」


そういうとサティーを後ろに下げアルバートが入り口の前に立ち扉に手をかける。

扉には取っ手がついてありそれを引けばいともたやすく開く。

扉を開いた先はそれなりに広いロビーになっていた

その内装はかつての姿とはかけ離れ、シャンデリアの残骸が落ちており。

アルバートが扉を開けたことによって埃が舞うのだった。


「っげほ、こりゃひでぇや、このロビーには何も無さそうかな?」


「どうだろう、よく調べてみない事には分からないよ」


「だな、ひとまず明かりの為にこのままドアは開けておくことにするぞ」


アルバート達は早速、ロビーを調べていく。

ウディグリスとサティの探索能力はと言うと。ウディグリスは体格もあってか屋内での探索は不得手であった。苦笑しながら、屋外の探索であれば分があるのですがと漏らす。反対にサティは屋内の探索を淡々とこなしていった。


「何もなさそうです。扉の先もしくは階段を上った先を調べる事をおすすめしますどうされますか? ご主人様?」


「まぁ一つ一つ扉を開いて調べていこうか、念には念を入れよう、サティ

マナサーチで扉を調べてみてくれ」


「かしこまりました、マナサーチ、起動」


サティの言葉により背中に装備しているマギスフィアが探知機へと変形する。

これは魔動機術の基本的な魔法の一つマナサーチと呼ばれるものだ。

その効果は魔力を持つ物品の存在を移す装置へとマギスフィアを変形させる魔法。

魔法がどういった性質でどれほどの強さを持つ物まではわからないが、罠の有無を確かめるにおいては十分と言えるだろう。このマナサーチの魔法はマギスフィアの大きさによって出力が変わる。今使っているマギスフィアは中くらいの大きさ。

およそ半径30mまでを感知できる。


「右側のドア二つの方からは魔力の反応は感じられませんでした。もう二つの方ですが、範囲外の為、調べきれませんでした、申し訳ございません」


「いや、それだけわかれば十分さ、アル、まずはこっちから調べてみよう、開けてみてくれ」


「おうよ、エド、今のうちに明かり出しておけよ、エントランスは外の明かりで調べれたけど、ここからはそうはいかないだろうしな」


「そうだね、ちょっと時間貰うけど、任せて」


エドモンドがランタンと冒険者セットから火口箱を取り出す。

冒険者セットとは冒険に必要な基本的なものが入った冒険者御用達の商品だ。

火付け道具、水袋、毛布やロープ、たいまつやナイフ、それらが背負い袋に収まっている。エドモンドは火打石を鳴らし火口に火をつけ、それをランタンに近づける

この作業だけでも10分、効率のいい素材や道具を使えば短縮につながるが。

エドモンド達の財政状況はそれらを買えるほど裕福ではないのだった。


「ご主人様、火をつけている間に調べ終わりました、最初の部屋はキッチンでございました、食器も調理器具もさび付き価値はないかと」


「え”!? あ、そっか、サティはルーンフォークだから暗視があるんだ」


エドモンドが火付けをしている際に、既に最初の部屋の探索はサティが終わらせてしまった。暗視とはその名の通り、暗い場所でも問題なく視界が通るという事だ。


「サティがいれば灯りいらずだな、しっかしマジで貧乏くじかね、こりゃ」


「まだ一部屋だけだ、アル君、別の部屋も調べてみない事には分からないぞ」


「だな! 隣の部屋も調べるぜ、エド、ランタン借りるぜ、そして、邪魔するぜ」


そういって入った部屋は一つのテーブルとソファが置いてある部屋だった。

壁には花瓶に生けられた薔薇が描かれた物も飾られ、暖炉も備え付けられていた。


「どうやら、談話室といった所か?」


「なーんもなさそうかねー、一応、絵があっけど、あれガメルになる?」


「ただの薔薇の絵だし、長い間放置されて色落ちも激しい。持って帰ったところで、1ガメルにもなりゃしないだろうね」


エドモンドはアルバートがそういったすぐ後、絵画を見てそう言い放つ。

観察眼、審美眼はエドモンドの十八番、一瞬で価値を定めてしまう。


「もしかしたら絵画を外してみたら、何かあったりとかするんじゃないか?」


「んな、かーちゃんのへそくりみたいな隠し方してるかよ」


ウディグリスは思い付きでそういいながら絵画を外してみる。するとそこにはくぼみがあり、くぼみの中には箱が入っていたのだった。


「お、アル君。何か箱を見つけたぞ、鍵は……かかってるな、開けれないな」


「え、まじで!? ま、とにかく俺に任せろ、こんな鍵ちょちょいのちょいだぜ!

さて、中身は何かなーっと……ガメルだ、まじでかーちゃんのへそくりだったわ」


ランタンを床に置き、箱の鍵をアルバートはいとも容易く開ける事に成功する。

さて、ウディグリスが偶然見つけた箱の中身、それはガメルであった。

魔動機文明時代でも人知れずガメルを隠す風習はあったという事なのだろう。


「まずはって所か、これ以外は何も無さそうだし、もう二つを調べてみよう」


「よっしゃ! 俺に任せろってなもんだ!」


エドモンドが提案してすぐにアルバートはランタンを持って先走ってしまう。

少ないながらも財宝を見つけて舞い上がってしまっていたのだ。

その油断が、アルバートを襲う事になる。


「お待ちください、アルバート様、そちらはまだ……」


そう、サティが調べたのは片方の二つの扉のみ、もう片方は調べていない。

そして、こういった遺跡には往々にして罠が仕掛けられているものである。


「うおおおおお!!! 扉が襲ってきやがったぁ!」


アルバートが開こうとした扉が襲い掛かってくるのだった!


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