「行ってきます!」「いってらっしゃい!」
必要な物を買い込み、既にギルドに戻っていたエドモンドの元に三人が戻ってくる
「待たせたな、エド、必要な物はもう買い終わったのか?」
「うん、買い終わったよ、それと一人紹介したいのがいるんだけど」
「初めまして、貴方がご主人様の言っていたアルバート様ですね、私はご主人様にサティの名前を頂きました、以後そうお呼びください」
エドモンドの隣にはスカート丈こそ短いがメイド服に身を包む少女が立っていた。
背丈はブルライト地方では珍しい160以上はあるかと思われる身長。
また緑色の瞳と金髪もこの地方では珍しい。
もっとも特徴的なのは首を覆っている硬質素材だろう。
彼女はルーンフォークと呼ばれる種族
その始まりは魔動機文明時代とされ、彼らは人によって作られた人造人間だ。
かつては多く存在していたものの、蛮族との戦闘で矢面に立たされその数を大きく減らしたとされている。また人造人間といっても人間のように血肉も体温もあり。
食事と睡眠が必要だ。ただ肉体の成長は無く死んでも腐らないという特性がある
また、人間により作られた事から神の声が聞こえず妖精を見る事が出来ない。
この事よりルーンフォークには魂が無いと言われるが真偽は定かではない。
魔動機文明時代では人間よりも下位にあたる存在とされてきたが。
今では蛮族と共に戦う存在としておおむね対等に扱われている。
また、このような出自ゆえに誰かに仕え忠誠を誓うのを是とするものも多い。
目の前のサティと名乗った少女もそれに倣いエドモンドを主人と呼ぶのだった。
「おい、エド、どこでこんな美人を拾ってきた、必要な物を買ってくるんじゃなかったのか? え? ナンパをしろとは言ってないぜ、おい」
「アル君、君の友達は女たらしという奴か? あ、私はウディグリス、君の事はアル君に既に聞いている、エドモンド君だったな、私もエド君と呼んでも?」
「いやぁ、帽子のお兄さんは顔がいいですからねぇ、女遊びの一度や二度は経験があると思いましたが、いやはや冒険の前にとは豪胆でいらっしゃる」
「ご主人様が望むのであれば、そういった事もやぶさかではございませんが」
「ちゃんと必要なものは買い揃えてきたよ、彼女とは成り行きで、でも遺跡探索において彼女ほど頼れる存在はいないと思うよ。ウディグリスさんに当たっては初めまして、いきなりですがまあ、お話を聞いていただければと思います、名前の方はお好きなようにどうぞ、後ボビンさんとサティは変な事言わない」
エドモンドは三人にここまでの経緯を話始める。
時間は二人がギルドを出てからエドモンドの外に出て準備をしていた所だ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「アンロックキー、ランタン、油、自分用に人形も買っておくか」
エドモンドも遺跡で何があってもいいようにといろいろと荷物を準備していた。
そんな準備も一通り終わった所で帰り道で女性に話しかけられる。
「すみません、そこの帽子の方、お時間よろしいですか?」
エドモンドが振り返れば、そこに立っていたのは金髪に緑の瞳。
ブルライト地方では珍しい容姿をした女性だった。
背も女性にしては高く160はあるかといった具合。
一番の特徴はその首元が硬質素材で覆われていた事と。
肩にガンと呼ばれる特殊な武器を担いでいたことであった。
「僕ですか? 友人を待たせてますので、申し訳ありませんが失礼します」
「その手荷物、冒険者ですよね、お願いです私を雇っていただきたいのです!」
「それこそ無理な話、僕は貴女に給金をお支払いできるほど裕福ではないので」
「給金の事でしたら結構、最低限の食事と宿代さえ頂ければ、それ以上は貴方様に差し上げます!」
「ふむ……何か理由があるようですね、時間はありませんので手短に話せるのでしたらお聞きしましょう」
「ありがとうございます、それでは……」
彼女はこの地方の北の方にある森にあるルーンフォークの里の出身であった。
遺跡に残るジェネレーターと呼ばれるルーンフォークを育成する魔動機を使用してコミュニティを作り静かに暮らしていた。しかしその故郷は原因不明の何かによって滅んでしまった。彼女は運よくその日は別の街に居た為に助かったとの事。
その後は故郷に戻るのは危険と思い独り仕事を探しにここまで歩いてきたらしい。
「ふむ……なぜ冒険者になろうと? 仕事なら他もあるでしょう? それに冒険者になるにしても、なぜ僕なのでしょう? 僕より優れた冒険者なら別にいますよ」
エドモンドが単純になぜ自分なのか疑問をぶつければ、サティはこう述べる。
「知りたいのです私の故郷がなぜ滅んだのかを。滅ぼした存在がいるのでしたら、その者に滅ぼした真意を聞きたいのです。それを調べるには冒険者になる道を選ぶべきだと思った次第。そして貴方を選んだ理由は貴方の雰囲気でしょうか。
優しさの中に確かな芯を持っているように感じこの方ならばと思いました
私は戦う術も学んでおります、どうかご一緒させていただけませんか!」
「…………うんいいよ、雇おうじゃないか。丁度、魔動機文明時代の遺跡を仲間と探索に行こうという話になってたんだ、魔動機術に精通している人物がいれば大いに助る、貴方の故郷についても暇があれば調べよう」
エドモンドはサティの話を聞き首を縦に振ることとした。アルバートと組んでいる事から分かる通り、エドモンドという男は割と情に篤い男だ、それをサティは一発で見抜いたというわけだ。事実彼はサティの故郷についても調べようと約束する。
ナイトメアでありながら優しく育ったのは育ての親の賜物だろうか。
それとも彼が最初から持つ善性の心と言う物なのか、まあそこは重要じゃない。
兎にも角にも、頼もしい仲間をエドモンドは得る事になったのだった。
「ありがとうございます! 精一杯働きます、ご主人様!」
「ご、ご主人様か、まぁいい、君の名前は?」
「私に名前はございません、30番目に生まれたので30番と呼ばれてました」
「ふむ30か、じゃぁ、僕は君をサティと呼ぶよ、いいかな?」
「ご主人様がそう呼ぶのでしたら、私は今日からサティです」
「そうかい、それじゃ、僕の仲間にも紹介したいし、ギルドへ向かうよ」
「畏まりました、ご主人様」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
さて、ここまで語った後、アルバートは涙を流していた
「う、っひぐ、サティ、お前苦労してきたんだな、故郷を失って、一人で頑張ってきたんだな、偉い、お前はめっちゃ偉いよ」
「いいご友人をお持ちのようで、ご主人様」
「まぁね、ほら、泣き止んでくれよアル、これから冒険だぞ」
「あ、ああ、そうだな! よっしゃ! サティも加わってこの4人で早速遺跡攻略だ! 場所はえっとボビンの地図を見る限り。ここから歩いて二日って所だな!
全員出発! 行ってきます!」
「一人で先走るのは危ないぞアル君、私も失礼する」
「っちょ、先に行かないでくれ! それじゃ行ってきます」
「私も失礼します。ご主人様行先は同じです慌てずとも平気です」
「行ってらっしゃい、無事に帰ってくるんだよ!」
「行ってらっしゃい! 財宝を持ち帰るのを期待してますぜ!」
「いってらっしゃい! がんばってねー!」
アルバートは地図を持って我先にと扉を開けて駆けていく。
それを心配したり、慌てたり、平然としたりしながら三人が追う。
そしてその後ろ姿に宿に残る三人が各々の言葉で送り出すのだった
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