第二章 仲間 邂逅 魔動機
「あっしはボビンと言いまして」「”貧乏くじ”だったかな」
初仕事を終えたエドモンドとアルバート二人はここ数日間何をしているかと言えば
「暇だなー」
「そういうなら街に出て仕事を見つけてきたらどう?」
「んー、まあ、そうしてみるわ、んじゃ行ってきまーす」
エドモンドの言葉をそのまま受け取り、アルバートは外へ出かける。
エドモンドはともにいかず、宿のテーブルについて本を読み続ける。
「エドモンド、あんたは一緒にいかないのかい?」
「ええ、僕は褒められた経歴を持っていませんから、仕事を受けようにも怪しまれてしまいます、こういうのはアルの方が適任です」
「そうかい、まぁ部屋代も貰ってるしこれ以上は何も言わないさ」
エドモンドのその言葉を聞けばこのギルドの経営者マリーは仕事に戻る。
彼は濡れ衣ではあるものの、殺人容疑で3年ほど投獄された経歴を持つ。
更に言えば、彼は忌み子とされるナイトメアと言う種族だ。
無用の混乱を避ける為にナイトメアの象徴たる頭部にある角を育ての親に貰い受けた帽子で隠しそれをひけらかさない細心の注意を払っている。
「ねーねー、エドにぃはなんの本を読んでるの?」
エドモンドに近づく少女はマリーの一人娘のミリー。まだ子供の彼女は好奇心の
ままにエドモンドの読んでいる本を尋ねる
「ああ、ミリー、これは魔動機について書かれた本だよ」
「まどーき?」
「ああ、魔動機ってのはね……」
さて魔動機だが、これを説明するには軽くでも魔動機文明アル・メナス時代という時代に触れなければならない。今から2000年前に栄えた時代。
この時代では多くの魔法の道具が生産されたと言われる。それまでは特権階級の物であった魔法がこの時代では一般人にも普及されていたとか。
代表的なもので【マギスフィア】これらは冒険者にも広く使用されている。
そしてその高度な魔法技術によって作られた疑似生物、それが魔動機だ。
基本的に魔動機は魔動機文明の遺跡にある。それらは鹵獲されて最近では街中で
作業をする姿も見受けられる。
「へぇ~、じゃあ、私も頑張ったらその魔法を使える?」
「そうだね、お母さんのお手伝いとお勉強を頑張れば出来るかもね」
エドモンドがそう微笑みながらミリーを撫でれば。ミリーはじゃあ頑張るとマリーの元へと駆け寄り仕事を手伝うのであった。
さて、ここいらで外に出たアルバートに視点を移し替えてみるとしよう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「仕事つってもなぁ、基本的にはギルドに寄せられる仕事を受けるってもんだからなぁ、街に出たら見つかるってもんじゃねぇよなぁ」
アルバートはそうぼやきながらぶらぶらと街を歩いていた。
そんなアルバートは門の大通りに人だかりができているのを見つける。
少し近づき聞き耳を立ててみれば。
「行き倒れだよ……」
「かわいそうに……まだ子供よ」
「誰か衛兵か神官呼んで来いよ」
そんな風に集まった人々が騒ぎ立てていた。
アルバートはその騒ぎの中心へと行けば。
そこには1mほどしかない少年が倒れているのであった。
「おいおい、自分らで助けろってんだ、おい大丈夫か?」
アルバートは人込みをかきわけ少年の元に駆け寄り。返事をするように問う。
しかして、その返事は口からではなく腹から出るのであった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「いやぁ、この度は助かりましたよお兄さん、もう、腹が減って死ぬかとねぇ」
あれからアルバートは翠の星に少年を伴って帰ってきた。
少年はマリーが出すスープとパンをある程度口に放り込み、咀嚼し終えると。
アルバートに感謝の言葉を述べる、その声音は少年の物ではなく、少々芝居がかった30はいっているであろう者の低い声音であった。
事実、彼は少年ではなく【グラスランナー】と呼ばれる種族である。
背丈こそ1mと人間の子供と差異がないがその耳は尖っており、肌も黒みがかっているので見分けは簡単につく存在だ。
他にもいろいろと特徴はあるが今ここでは重要ではないので割愛する。
「いやねぇ、ここに来るまでに蛮族に襲われちまってねぇ、ガメルも飯も
ぜーんぶ取られちまったってなもんですよ、まぁ、命ばかりは助かりましてね
もう死に物狂いでここにたどり着いて、そしたら空腹と安心感でばったりさ」
「つまりあんたは今文無しってわけかい? お代はどうしてくれるんだい?」
マリーは散々っぱら、食べ散らかしたグラスランナーへそう問うてみれば。
「遺跡の情報と変わりじゃいけないですかねぇ? 名乗り遅れましたがあっしは
ボビンと言いまして探し屋なんてケチな商売をさせてもらっております。冒険者をやってれば、あっしの名前を耳にしてませんかいお兄さん?」
ボビンと名乗る小男はアルバートにそう尋ねるがアルバートはそういった世情にはあまり明るくなく、彼の事を知らないと首を横に振る。
「僕は知っているよ君のくれる情報は”枯れた遺跡”ばかりという噂と一緒にね
それゆえについたあだ名は”貧乏くじ”だったかな」
エドモンドは牢獄暮らしではあったが、衛兵の世間話を盗み聞きしていた事から。わりと最近の世情にも通じておりボビンなる探し屋もある程度知っていた。
彼は探し屋としてそれなりの技量を持つが、変な癖も持っている。
魔動機の遺跡は比較的見つかりやすいが為か、探索済みであったり、大したものが見つからない遺跡もある、それらは総じて”枯れた遺跡”と呼ばれている。
このボビン、そういった遺跡をよくよく見つける、まあ変な癖を持っていた。
「ええ、ええ、よく言われますさ。今回も貧乏くじかもしれませんが、冒険者をやっているなら、そんなのに怯えてちゃぁいけないんじゃぁないですかい?」
こうして冒険者を焚きつけて、遺跡の情報を売るのも彼の常套手段だったりする。
「ボビンの言うとおりだぜ、エド! 飯の代金の代わりに遺跡の情報を貰おう!」
「まあ、アルがそう決めたなら、僕はそれでいいよ。」
「それじゃ、決まりでさぁ、店主さん紙と書く物を貰えませんかね?」
「あいよ、これ使いな、今回は当座の飯と宿代、遺跡が大規模だったり貴重な財宝が見つかるようなら相応のガメルも用意がある、それでいいかい? ボビン」
「ええ、ええ、それで構いませんさ、それじゃ今から地図を描きますねっと」
基本的に情報量は後払いとなっており、冒険者が遺跡から帰還した際にギルドから探し屋へ報酬が支払われるという形になっている。
貴重な財宝や大規模な遺跡ならその分、探し屋に支払われる金額も大きくなる。
まあ、冒険者の得た報酬の多寡とは関係が無い為、予想外の財宝が出れば儲けに。
その逆で何も出てこなければ冒険者は損をしてしまうというものだ。
さて、数分も経たずにボビンは地図を描き終えてそれをアルバートに渡す。
それと同時にボビンは口を開く。
「お兄さん、差し出がましいかもしれませんが、お仲間はそっちの帽子のお兄さん一人だったりしますかい?」
「うん? ああ、そうだな、ここのギルドに所属してるのが俺達だけだから、2人じゃちと、厳しい遺跡なのか?」
「うーん、中まで見てないのでわかりませんが、さすがに二人で遺跡を探索するのは無理があるでしょうなぁ、ふむ………そうだ! これはあっしの頼みでもありますが、一人紹介したいのがいるんですが、どうですかい?」
「ボビンの知り合いなのか? どんな奴よ」
「そいつも冒険者なんですが、義理堅く情に篤い奴でしてねぇ、そんでもって実力も申し分ない、あの守りはそうそう崩せるものじゃぁない。訳あって今はパーティーを組んでないそうでして、お二人には悪い話じゃ無いでしょう」
「守りって事は前衛ですか?」
「ええ、リルドラケンでウディグリスって言うんでさ」
「仲間が増えるに越したことは無い! ボビン、そのウディグリスって人、俺達に紹介してくれよ!」
「あいわかりました、それじゃぁ、奴がいるギルドまで案内しますぜ」
「それじゃぁ、僕はその間に遺跡へ行く準備をしてくる」
そうして三人の男は店を後にする。残ったマリーはまたしても一人重い耽る
(ちょっとずつ賑やかになってきたよお父ちゃん、やっぱり変な奴しか集まらないけどね、そういう運命なのかねえ)
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