「またいつか、よろしくね」「勿論っす!」

さて、依頼を受けたアルバートとエドモンドは。

2日目にして成果を上げたその後日の見張りはと言うと。


「ザス・ヴァスト・ル・バン・シャイア・ラクラウ・ジバジガ!」


エドモンドの詠唱が終わると、小さな稲妻がジャイアントリザードの群れを焼き焦がしていく。これも操霊魔法の一つ【スパーク】と呼ばれる、操霊魔法の数少ない攻撃魔法だ操霊魔法は味方を補助する魔法は多いが、攻撃魔法は少ないのが欠点だ

また、このスパークもそこまでの威力は持たず、倒すには至らないが。


「どりゃああああ! おら、散れ散れ! てめーらに山羊はやらせねーぞ!」


スパークで焼かれたジャイアントリザードに間髪いれずにエドモンドの後方に一時待機していたアルバートが切りかかる。この追撃でジャイアントリザード一体はその場で絶命、ほかの奴も逃げ出していくあれから期日までジャイアントリザードが来なくなることは無く。最後の期日にも数体のジャイアントリザードと闘っていた。

既にこの群れの他に3体の群れが2回来たほどだ。

今回も危なげなく、蹴散らしていけば、日暮れになっていく。


「ふぃー、さすがに三連戦はきっちーぜ、エド、マナは大丈夫か?」


「もうギリッギリだよ、これ以上こられたら、降参するしかないね」


二人してその場にへばり、休憩を取りだす。

さて、マナとは何かと言えば、ラクシアにおけるエネルギー的存在だ。

ラクシアに生きる生命であれば、ほとんどが内包するものである。

まあ。中には内包しない存在もいるのだが、それについては割愛する。

そして、このマナと言う物の使い道は様々な使用方法がある

冒険者においては魔法を使う為の物という認識が強いだろうか。

マナの強さは本人の精神、魔法使いとしての技量が起因しており。

エドモンドはそのどちらも今のレベルからすれば高いと言える。

まあ、それでも3回も戦えば底を尽きるというものだが。


「おーい、二人とも、日暮れだし、山羊を牧舎に返すぞー」


モーガンが二人に声をかけると、二人はようやくかと立ち上がり。

山羊を戻すのを手伝う事にする。この5日間で二人は冒険者としてよりも牧童としての経験の方が身についたのではないかと思うくらい、手際がよかった。


「…………うん、今日も被害はない、二人のおかげだよ、5日間お疲れ様」


「いえ、俺達は俺たちの出来る事をしただけっすから!」


「それにジャイアントリザードはまだ結構出てきてますね。季節の問題か山羊の味を覚えてしまったか、とにかく、今後も隙をついて襲うかもしれません」


「ううむ、確かに君らの報告を聞くに、回数の程度はあれど、まだジャイアントリザードは出てきてるみたいだし。鳴子をつけたりして様子見かねぇ」


「あ、それなら、明日の帰る前にやらせてもらいますよ」


アルバートは自分が罠をかけておこうと提案する。


「ああ、それは助かるね、頼むよ、その分の報酬も出すよ」


「いえ、このくらい、飯と宿代の分を考えたら、足りないくらいっすから」


モーガンはそれでもと頑なに意見を変える事はなく。

困ったアルバートは山羊肉をお土産にもらう事で手を打ってもらった。

そして、翌日の事。


「モーガンさん、鳴子の設置、終わりましたよ。今日までお世話になりました」


朝早くから目を覚まし。鳴子を設置し始め、時刻は丁度10事頃になった頃だ。


「本当に世話になりっぱなしだね、君らは、今日の馬車で帰るんだろ?」


「はい、もうそろそろ来る頃だろうって、エドが先に門の方に行ってます」


「ああ、先ほど彼からは挨拶を頂いたよ、実に礼儀正しい男だね、君の友達は」


「ええ、自慢の親友っす。あいつと一緒なら、何も怖くないってなもんすよ」


「そうかい……、じゃあ、ここで引き留めすぎるのも悪いね、お別れだ」


「そっすね、それじゃモーガンさん、お世話になりました!」


「ああ……またいつか、よろしくね」


アルバートはその言葉に大きな声で叫びながら答える


「勿論っす! また会う日まで!」


彼らの初めての冒険はこれで終わりを迎える。

遺跡探索や蛮族退治といった、派手な活躍ではないかもしれないだろう。

しかし冒険者とは力を持たない人々の為にその力を振るい助ける存在だ。

そこには貴賎なんてものは無い。困っている人を助ける。それが彼らなのだ。

まだまだ、二人の冒険は始まったばかり。

始まりは小さくとも、大きな一歩。

いずれ、この一歩が彼らを騎士へと導く。

だが、それはまだ遠い未来のお話だ。

ひとまずは、ここで筆を置くとしよう。

彼らの物語に幸あれ。



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