第1章4話 枕にチャート、いかがですか?
「さて、今日は何からやるか」
ぐっすり寝て、朝食も取り、現在は朝の9時である。夏休みも残り2日となったが、昨日は春雪のおかげで凄まじいペースで進み、正直このペースなら今日中に終わりそうだ。
「残り何があるっけ」
「自由研究、感想文、問題集が終わったから、後はチャートと古文漢文の問題集、それと…あ、英語の書き取りと小論文か」
「じゃあ僕は古漢からやるから、チャートやっといて」
「あいよ。てか範囲どこだ?」
「数1全部」
ん?
「once more please??」
「全部。1Aのチャートの数1のとこ全部」
はい?
「Pardon??」
「だから全部だよ。130何番くらいのとこまで」
「ほぉ?」
俺たちの高校では黄色チャート、チャート界隈でも標準くらいのものを使っており、難易度は簡単なものから難しいものまで勢揃いだ。
基礎を勉強するにはうってつけの問題集で、確かに、夏休みなら沢山やることが出来、学力upに繋がるだろうが、残り2日でやると考えるとそれも期待できそうにない。てか、終わるかすら怪しい。
「どっどどどどうしよう」
「範囲知らなかったんだ…。とりあえず、僕が他のやつ全部やっとくから、海人はチャートだけやって」
「あ、ああ。助かる」
さて、どうしようか。
1日あたり70個くらいはやらないといけない。1個あたり10分はかかるので、700分。12時間くらい必要だ。休憩や睡眠を含むと、結構ギリギリな気がする。
「…写すか」
ありがたいことに俺の成績はちょうど平均をうろうろしてるくらいだ。調整は簡単である。
「数と式、集合と命題…うん。比較的簡単なものでよかった」
「お互い集中しないといけなそうだから、僕あっちの部屋いくね」
「あいよ」
こうして、チャート70個の大数学祭が始まった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
~春雪side~
課題を肩代わりするのも大変なんだよなぁ。筆跡とか気抜いたらすぐ自分のに戻っちゃうし。
それにしても、昨日海人から聞いてみたけどギャルゲーも面白そうだな。うん。今度海人からオススメを聞いてみよう。
「さて、そろそろ始めようか」
チャートの量はえげつないが、こっちもこっちで中々きつい量をしている。
僕も、慢心はしていられない。
ーーーーーーーーーーーーーーー
~海人side~
チャートを始めてからおよそ5時間が経過し、流石に疲れが出てきたので少し休もうと席を立った。
「10分だけ。ログボ貰ってTwitter見るだけだ」
そう自分に言い聞かせ、俺は某ひっぱりハンティングアプリを開いた。
…もちろんこの後1時間が経ち、猛烈に後悔することになるが、それはまた別の機会に。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「調子どう?」
疲れを感じさせる声で、春雪が部屋に入ってきた。
「大丈夫。ちょいまずいくらいだ」
ちょっと休憩しようと思ったら、すごい時間が経っていた。なんてことありますよね?
「どれどれ……うん。だいぶまずいね」
そう言って、春雪は半分の半分くらいしか終わってない俺のチャートをパラパラめくって遊んでいた。
ちなみに、現在時刻は15時。本来なら半分くらいは終わっているペースである。
「そっちはどうなんだ?」
「順調だよ。今日寝なかったら明日の午後には終わってる」
「今日は寝ないのか」
「前日は寝たいからね。テストあるし」
「そういやあったな。何も勉強してないけど」
うちの高校は休み明けにテストがある。難易度はさほど高くないが、いかんせん、勉強していないと解きづらい内容なのでシビアである。まあ、正直諦めているから問題ではないが。
「てか、お前勉強大丈夫なのか?」
春雪はそこそこ勉強ができるが、別に天才という訳ではなく、勉強しないと大して点数は取れない。今回のように、俺がテスト勉強を邪魔してしまうとまずいのではないか。
「ん?まあ、たまにはいいよ」
春雪の言葉から察するに、こいつもテストは諦めたのだろう。なんか、ほんと申し訳ない。
「さ、そんなことはいいから課題再開しよ」
「あ、ああ」
春雪は華奢だが少し頼もしくも見える背中を向け、部屋を出ていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます