第1章3話 塵積もに次ぐ塵積も。

『……従って、五月病は当人の精神的脆弱性が起因している訳だが、それに対するソリューションとして寧ろ保護者や管理者がそこに寄り添うことが大事だと主張したい。

どうしても仕事や学校に行きたくない人がいたら、「今日だけ、今日だけ頑張ってみよう」と言ってあげてみてはどうだろうか。きっと高い確率で当人は明日も明後日も頑張ることができるだろう。

2年B組 夏山海人』




「…おい…今何時だ…?」


「23時…」


「間に合った…」


お互い満身創痍で、俺は読書感想文と自由研究を終え、春雪は問題集を終わらせた。


自由研究と言うと、調べ物をしたり、工作をしたり等々、十人十色の作品が出来上がる訳だが、俺は調べ物の方を選んだ。

それで、五月病に関することを適当に調べているが、調べ物も読書感想文と同じように分量が多いので中々埋まらなかった。


「とりま寝るか…」


「うん…6時に起こして…」


「起きれたらな…」


正直、春雪が0時までに終わらせてくれるとは思ってなかったので、思ったより早いペースで進めることが出来た。


課題なんて作業ゲーだが、作業効率という言葉がある。人によっては、下手に長時間やるよりは少し睡眠を摂る方が効率がよかったりする。


「それじゃ、電気消すよ」


「ああ、おやすみ」































「…ねえ、起きてる?」


お互い布団に入ってから5分程で、春雪が話しかけてきた。


「起きてるぞ。どうした?」


「海人が今やってるゲームって、面白いの?」


俺が初めて課題の存在を忘れたことがやはり気になるようで、友達と話せるように定番所のゲームはするが、ギャルゲーにはほとんど興味を示さないあの春雪が、そんなことを聞いてきた。


「面白い…。うん。面白いよ」


「現実では女嫌いなのに?」


からかうように春雪はそう言ったが、嫌いなやつに女が多いだけで、別に女嫌いな訳では無い。


「まぁ、ゲームのヒロインなら現実の俺が何しようが関係ないしな」


「うわぁ、拗らせてる…。でも、それだけじゃ毎年恒例のものを忘れないよね」


「何が俺をここまで変えたか、ってことか」


「うん」


「どっから話したもんか…。えっと、アキっていうヒロインが居てだな……… 」




こうして、俺はギャルゲーを余り知らない友人に対して俺の現状と激ムズギャルゲーの恐ろしさを話し、結局寝るのは朝の五時になってしまった。




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