第5話 考えた少年の話 ・ トストンの町はずれにて
民家の石垣にちょこんと座った少年を見つけた。
少年はうつろな目をして、時々、切なげなため息をついてる。
「こんにちは。何をしてるの?」
思わず和泉くんが声をかける。
「…。考えているのさ…」
少年は切なげなまま答えた。
「考えている?」
和泉くんが再び問うと、少年は一寸、面倒くさそうな顔をしたが口を開いた。
「そうさ、僕は小さな子供だから、チカラも弱いし何かをやろうにもお金がない。
何も出来ない。だから考えている」
「?何か欲しいモノでもあるの?」
「何が必要かが解れば、欲しいモノも出てくるだろうさ。
それら全て!これから起こることと起こらねば成らない全てについて考えているんだ」
「?」
「今、僕には何もない。大人に比べれば小さくて弱い生き物だ。
ダケドね僕にはまだ沢山の時間があるんだ。
この時間を武器にして僕は考えて、考えて、考えて……。
たくさん考えるのさ!」
そう言った少年の目はきらきらと輝いていた。
「なにを?」
和泉くんが尋ねる。
「人生を!これから起こるだろう事と、その時僕はどうするか?
僕はこれから僕に起こりうる全ての可能性を考え尽くす!
僕が人生の第一歩を歩みはじめた『時』その時僕の前には、
輝かしい人生の完成された道が開けるのさ」
「無理だよ」
「無理じゃ無いよ、じつは、もうすぐ『全て』が考え終わりそうなんだ」
「だから無理だと言ったんだよ」
「どうゆうことさ?」
「いいかい?君には絶対的に『経験』が足りないんだ。
だから、人生にそんなに簡単に答えが出せるんだ。
ホントの人生って言うのは、君の思っている何万……いや、もっともっと!
予想も出来ないほど沢山の事が待ってるんだ」
少年は黙って和泉くんを見ていた。
「だから、君のような子供が今やらなくては成らないことは、考える事じゃなくて感じること。『体験』することなんだ。考える事はいつでも出来る。
体験は今の一瞬しか出来ないことかも知れないんだよ」
そう言って泉君は、少し、きつい言い方だったかなと思い直し、
声のトーンをやさしくして続けた。
「僕もね、この島に来て、最近そう思ったんだ」
「あーっ!なんて事をしてくれたんだよ!」
突然、少年が頭を抱えて大声を上げた。
「え?」
戸惑う和泉くん。
「セッカク終わりかけてたのに!また考える事が増えちゃったじゃないかぁ!」
「ご、ごめん……」
独りよがりて゛世間知らず
最悪な愚か者が
くだらない哲学で
本当に貴重なモノを腐らせていった話
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