第4話  アエマの壁の話 ・アエマ王国遺跡にて

 どこまでも続く砂丘の真ん中に、錆びた鉄のような壁が延々と続いていた。

 ナナメが口を開く。

「和泉さん、これが『アエマの壁』です」

「なんだよ!この壁!さわるとボロボロ崩れて来るー!」

 壁と言われたものの手触りを確認しようとして触った和泉くんが、驚きの声を上げた。

「昔、ここに『アエマ』と言う国がありました。とてもりっぱな城があり、その回りは高くて硬い塀で囲まれていました」

「これが?『高くて硬い塀』?」

 そう言いながら和泉くんはぼろぼろと塀を崩して見せた。

「お城も塀もこの『壁』の中にアリました。ある時、この国を攻めようとしたよその国が『高くて硬い塀』を乗り越えるため『長くて丈夫なハシゴ』を使おうとしている事を知った王様が、この『アエマの壁』を造らせ塀とお城を囲ってしまったのです」

「二重にしたんだね」

「すぐにぼろぼろになる『壁』です。丈夫にする必要も高くする必要も無かったためこの壁はあっという間に出来上がりました。やがて、敵国が責めてきたのですが」

「あっ!解った!すぐ崩れてしまうこの壁には、ハシゴが使えなかったんだ!」

「ソウデス。すぐにボロボロになってしまうこの壁はボロボロと崩れ、『長くて丈夫なハシゴ』の侵入を拒んだのデス。敵の国は長いハシゴを持ち込むためにこの壁を崩し尽くさなければ成らず、長い時間をかけました」

「敵国は疲労し、アエマの兵隊は充分な戦の準備を整える事が出来た」

 高揚したように、和泉くんが言った。

「はい、待ち伏せされたように敵の国はアエマの兵士に一人残らず倒されてしまいました」

「戦術に長けた王様だったんだね」

「いえ、そうではアリマセン。争いを好まない国王は話し合いの機会を作ろうとして『塀』では無く『壁』を造ったのです。


『我々の間には『壁』など無い。

たとえあってもこの様にすぐに取り払える物だ』


 と言う意思表示のつもりだったのです」

「はぁ?」

「結果、兵士達の志気を高め。アエマの軍は一人歩きを始め、王の望まぬ戦いに勝利してしまったのデス。王はそのことを酷く嘆き、自害しました。そして国は急激に衰退していったのです」

「だから、遺跡しか残ってないのか」

「ロマンチストだったのでしょうね」

「違う、と、思う」


言いたいことを、

かっこつけてハッキリ言わず

最後まで自己中心的な振る舞いをし続け、

国を滅ぼした偽善者の話

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