第3話 三賢者の話 ・トポル族の祭壇にて
早朝、トポル族の賢者たちが祈りをささげるという祭壇へ、
泉君は一人でたずねてみた。
祭壇に着くと、ラマ服のような赤い袈裟を着た賢者たちが三人、
車座になって座禅を組んでいた。
「何をなさっているのですか?」
すると一番小さな賢者が答えた。
「我々はトポルの村の幸せを祈っておる」
それを受けるように一番頭の大きな賢者が答えた。
「代々の神官たちがトポルの幸せを祈り続けてきた」
「長い長い間祈ってきた。だが、我ら一族のもとには、まだ幸せが訪れない」
最後に、一番背の高い賢者がそう言った。
「だから、我々は祈り続ける」
と、小さい賢者。
「今も、そしてこれからも」
答えたのは頭の大きい賢者。
「長い長い時間をかけて」
最後に背の高い賢者。
「大変なのですね、トポルの村は戦争でも始まっているのですか?」
和泉くんが心配そうに尋ねた。
「な、何を言っているのだ!オマエは!」
と、小さい賢者が怒った。
「我らの村は争い事など無い!」
と、頭の大きい賢者が怒鳴った。
「風は清く吹き、河は豊かに流れ、大地はこれ以上に無いほどの恵みを与えてくれる」
と、背の高い賢者が静かに言った。
「そんなに平和なのに?『幸せが来ない』?」
和泉くんが問うと、三人の賢者は顔を見合わせた。
「とても平和じゃないですか、とても幸せに思えますケド?」
「何を言っているのだ!オマエは!」
小さい賢者は怒ってた。
「『平和』?『平和』がなんだというのだ?」
頭の大きい賢者も怒っていた。
「われわれが祈っているのは
『シアワセ』だ!
我々はシアワセが『見たい』のだ」
もちろん、背の高い賢者も怒っていた。
「そんなぁ。メチャクチャだよー!」
幸せで無かったことが無いために
幸せにあこがれて
不幸な魂のまま死んでいく一族の話
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