第2話 シマシマの話 ・ オトレラ湖畔にて
「和泉さん、『シマシマ』がいまス」
それは、一見、シマウマのように見えたが、前にも後ろにも首から上が無く、
かといって、前にも後ろにシッポが無い生き物だった。
「なんだよ、こいつらどっちが前でどっちが後ろだい?」
和泉くんが尋ねる。
「昔、シマシマも頭とシッポを持っていました」
しんみりとナナメが言う。
「ソレが何でまたこんな事になったんだ?」
「シマシマはとても弱い動物で、他の動物達の餌に成りやすいのです。仲間を思いやる心が強いシマシマは自分たちの仲間が食べられてしまうことに非常に心を痛め、仲間の誰が犠牲になったのかをワザと気づかぬ振りをすることにしたのです」
「なんだよそれ、わけわかんないよ」
「それほど彼らの悲しみは深かったと感じてください。ソレが証拠には彼らの願いは天に届き顔とシッポが無くなってしまい、誰が誰やらを確認することが出来なくなったのです」
厭きれたような和泉の顔を見て、ナナメが続けた。
「彼らは大切な人を失う悲しみから解放されたのです」
限りなき優しさによって生まれた
無関心と無責任により
やがて滅びていくであろう湖畔の弱虫達の話
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