第1話(7)

「成程…親友の捜索、ね。」

「はい…受けてもらえますか?」


 蒔は親友の説明を終え、受けてもらえるかどうかを皐月・・に聞いた。

何故、冬也に聞かなかったのかというと、さっきの通りだ。


「うーん、俺はいいんだけどさぁ、冬也はどう思う?」

「別にいいけど…それよりその子/

「うん、受けてあげるよ。安心して、必ず解決させて見せるから。」


 冬也の発しかけた言葉は、皐月によって掻き消された。そのことに対して

冬也が怒った。


「おい皐月…俺の話を遮さえぎんじゃねぇよ…」


冬也の声のトーンはさっきより低く、声も小さかった。しかし、

皐月は本当に聞こえていなかったのか、またはわざと無視したのか

分からないが、そのことはスルーだった。


「ところでさ、君の名前は?まだ聞いてなかったよね。」


 冬也は皐月が無視したと思っているようで、最初は地味に怖い怒りの

表情をしたが、すぐに呆れた、と言うようにため息をついた。


「あ、私の名前は夕崎蒔です。それより、依頼受けてくださって、本当に

ありがとうございます。」


 そう言ってすぐ、蒔は、本当に頼りになるのだろうかと、皐月と

冬也には言えないが、チームワークもままなっていないし、雰囲気も

ピリッとしていないし…と思っていた。しかし、ここで口に出すのは

非常識だと考え、蒔は口に出さなかった。


「いーって、いーって。だってオレら、探偵だし。」


 いかにも陽気な返答をする皐月。しかも、何故かケラケラと笑いながら

冬也の方を見ていた。何だろうと思って蒔も見てみると…


冬也はうとうとしていて、頭がデスクにぶつかりそうになっていた。

今の蒔は笑わないが、怒りのボルテージがMAXの蒔だったら

大爆笑だっただろう。


梅原ももう先程のようなケラケラとした笑いではなかったが、

今は笑いをかみ殺して「くくく…」と唸っていた。さらに、

いつ手に持ったのか、手にはスマホがあり、録画モードで今の出来事の

一部始終を撮影していた。


―と、その時。

ついに冬也の頭がデスクに衝突した!しかも不幸なことに、衝突先には

鉄製の鉛筆削りが…


 ゴツッ、という鈍い音の後に「……ってぇ…」という冬也のうめき声が

聞こえた。その様子はとても痛々しそうだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る