第1話(6)

「ど、どうしたの?急に。」


 皐月に言われ、蒔は我に返った。途端に、恥ずかしくて顔が火照るのが、

蒔自身にも分かった。


「あ…ご、ごめんなさいっ!ついつい、私の悪い癖で…」

「フッ、気にしねぇよ。悪い癖は治らないもんな~」


 と、誤ってる最中にもかかわらず、冬也はすぐ挑発的な言葉を

蒔に浴びせた。しかし、どんな状況でも発動するのが

蒔の怒りのボルテージである。


「かっちーん」


ただ、蒔も蒔なのだ。少しの挑発でもボルテージがMAXになって

しまうのが、解決策のない難点なのだ。


「テメェ…やんのか?言っとくけどなあ、私は空手初段だぜ?」

「おう、いーじゃねーか。見た目と違って中々骨はありそうだ。」


 蒔と冬也が攻撃の構えに入ったところで、皐月が止めに入った。


「やめんかーい!個々は事務所なので、争い事は禁止でーす。」

「邪魔すんなよ。久々に俺の技を披露できるんだから!」


 そんな冬也に皐月がこの一言。


「いーのかなー、そんなこと言ってると冬也の秘密くろれきし、

ばらしちゃうよー?」


この言葉に、あの冬也がひどく動揺し、皐月を睨みつけた。そして

部屋の隅に皐月を連れていき、耳元でこう言った。


「俺の秘密くろれきしあの子にばらしたら、お前を半殺しにするぞ。」

「えー、半殺しにしないなら黙っててもいいけどー」

「ッ、わーったよ!何もしねぇよ!」

「よろしい。黙っててあげるよ。」


 部屋の隅からもといた場所に戻ると、蒔は元に戻っていて、

不思議そうな顔で二人を迎えた。


「なんかあったんですか?」

「なっ、なんもねぇよ!」


不機嫌な冬也に対し、またボルテージが上がり始めたが、

珍しく蒔は我慢したようだった。


「ところで、オレたちにどんな依頼なんだい?」


 皐月が話し出したことで、ようやく蒔は、本来の目的を

思い出した。


「それは―」


 蒔は、瀬里奈のことを、詳しく的確に伝えた。

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