第1話(4)
「3、2…」
ああ、カウントダウンが終わる…最後に青年たちの顔でも頭に焼き付けよう。
そんなことを思いながら、蒔は顔を上げ、青年たちの顔を眺めた。
「1…」
綺麗だなあ。何でこんな美しい人たちが、こんな残酷な世界にいるのだろう。
そう思うと、蒔は自分が哀れに思えてならなかった。
「0。残念です。貴男達が私の様に残酷だとは思いませんでしたが…仕方ありません。約束通り、この少女を殺します。」
瑠依は他人事のようにそういうと、引き金に手を掛けた。そして―
パァァァアン!!
乾いた音が周りに響く。民衆は銃口に視線を集めた。しかし、そこから出ていたのは煙―だけ。
「だから言ったじゃないですか。この勝負は僕たちの勝ちですって。」
あの青年はそう言った。銃の引き金に手を掛ける時から表情一つ変えずに。
「ど、どういうことだ…!?この銃は確かに本物の筈!!」
と、蒔と民衆、瑠依が驚いている時。誰かの通報によって、警察が駆け付けた。
「午前11時25分、銃刀法違反、殺人未遂、強制猥褻の疑いで逮捕する!!」
蒔はホッとしつつ、なぜ銃口から煙しか出てこないのか、謎に思っていた。
「覚えておいてほしいですね。僕は、梅原探偵事務所所長、梅原皐月だ。」
「同じく、助手の名干冬也だ。」
「ははっ、探偵さんですか…本当に完全敗北だったよ…」
瑠依は警察に連行されながら呟いた。瑠依がパトカーに乗って去っていくのを見届けると、梅原と名干と名乗った青年が蒔に駆け寄った。
「危なかったな…と、それよりも、大丈夫か?君。」
「怪我などないか?」
安心感と、緊張の糸が切れたことにより、蒔はへなへなとその場に座り込んだ。そして、大げさだが、そのまま気を失ってしまった。
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