第5話 南さんとの違い
「ちょっとすいません」
考え込んでいた私にそんな声がとどき慌てて振り向きながら身構える姿勢を取りそうになるが先に視界に入ったのは右手にスマホ持ちながら「電話です」と伝えるジェスチャーをしていた。
何やってるんだ、と内心呆れるが別に今はいい。「わかりました」と簡単に伝えると運転手はドアの方へ向かい足を挟めてドアを閉めないようにした。まあ閉めてしまえばカードキーのないであろうあの人は入れなくなってしまうからあの行動は当然なのだが私からすれば入ってくるなって感じだ。
「すいません。職員から呼ばれたのでここで。案内はいずれしますので」
そういうと今度はドアを閉めた。それに安堵したのか溜息が出る。ソファに腰かけ謎の疲れをとる。テレリモコンをテーブルから取り向けるが付ける気にも見る気にもなれずに立ち上がる。
「出ようかな」
歩きながら思うけど私って独り言がほかの人に比べて多いと思う。実際に比べたことはないけれど。
「?」
「ん?」
ドアを開けると右手側のドアも開いて長髪のぱっと見お姉さん風の人が出てきて目が合った。
「誰?」
ああ、聞いてないのか。最初に思ったのはそれだった。まあ実験体同士仲良くする必要などないけど聞いてないないことが...まああるのか。
「...っと」
なんだろう。なにか言いたげな様子だがわからない。その沈黙の中で私は車の中での言葉を思い出す。
【会ったら孤立してしまうかもしれない】
まあ実際に孤立するかどうかはこれからの、今から始まっているのだが。
「私は南高海。よろしくね」
名前が言いたかったのか。少女は小さく首を傾けて笑顔を向けた。私にはそういうのができないので羨ましくありどうやったらそうできるのか疑問だった。
「えっと冬木です。よろしく...お願いします」
たいして年齢も変わらないだろうに敬語になってしい大学入試の面接練習を軽く思い出す。
挨拶を交わした南は私を上から下まで見た後になにやら身じろぎして私から数歩引いた。
「冬木さん......まさか...」
私に何かついていたのだろうか。
「なにか.........」
血だ。私は赤のロングスカートを着ていたのだが脛は出ている。そこに母親の血が付いていたのだろう。
【会ったら孤立してしまうかもしれない】
またあの言葉がフラッシュバックするのだがすぐに振り払う。
てゆうかこの人が血痕を見て動揺しているということは南は自分の手で家族を殺していないのだろう。
「私は、自分で母親を殺した。」
なんでそんなことを言ったのか自分でも分からないけど、なぜか言ってしまった。
「うそ...でしょ...」
その反応に私は耐えられなかったのか、その辺は分からないけれどゆっくりと自室に入りドアに背を付けて座り込む。
「やっぱり変なのかな...いや、」
白い天井を見てさらに思う。
「家族を殺めることがかな」
ver「F」の魔法行使 ゆう @yuun
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます