第3話 向日葵の別のカオ

「わたしは日向さんのことが好きなんです。だから、奥さんと別れてくれませんか?」


「そう言われても困るよ。俺はあいつのことを愛しているし、あいつのことしか見えないんだ」


 派遣会社で働く私はいつも元気だ。親が言うには、名前以上に元気がありすぎて女の子と言うよりは、活発な男の子として育ったという、何とも言えない言われ方をした。


 私が派遣される場所はイベント会場が多い。私の声の大きさと、有り余っている元気さが功を奏しているのだろう。だけど私だって大人しめの事務だってしたいし、声を全く出さない流れ作業だってしたい。


 人はその人の第一印象で、固定したイメージを植え付ける。私はその固定イメージで立ち位置が確定してしまった。そのせいで真面目に告白をしても相手にされない。ううん、真面目なことがかえって障害となっている。


 向日葵はいつも元気。私も同じだ。それなのに……私のこの有り余る想いは、報われることが無いのだろうか? 


「人は無いモノねだりなんだ。だけど、俺はねだらない。俺にはあいつがいるだけで満足してるし、他の誰でもない、奥さんという絶大な存在が俺を迷わせない。だから、ひまちゃんのことはどうやっても見れないんだ。どうか、わかってくれ」


 ああ、理不尽だ。少しくらい付き合ってくれてもいいじゃない! 何よ奥さん、奥さんって!! 別に私は日向さんとどうこうなろうなんて、ほんの少ししか思ってないのに。


 思ってるだけじゃダメなのかな? 行動力のある私らしく、彼をずっとずっと見つめ続けることが私なりの愛し方……だから、私は――


 日向さんの行く先々に、先回りをしてその度に声をかけた。かける言葉はいつも同じ……


「日向さん、私はあなたのことをずっと、見つめ続けています……あなたが私を見つめなくても、私はあなたをずっと、ずっと……見つめ続けて生きていきますから……」


「か、勘弁してくれ……」


 どうして逃げられるの? こんなにも私はあなたのことを見つめていられるのに――

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恋を知らなくも、恋。 遥 かずら @hkz7

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