書きかけた手紙

 書きかけた手紙をくしゃくしゃと潰し、屑籠に入れる。これで何枚目の手紙だろう。これでいくつめの嘘をついたのだろう。

 どれが本当の私なのかよくわからなくなってきてしまった。いいや、どれもかも私であることは間違いない。騙しているわけじゃない。この嘘が彼にわかってしまったとき、彼は果たして私を許してくれるだろうか。彼のことだから案外傷つきはしないのかもしれない。私のことで彼が傷つく理由も、それだけの関係性も私はまだ築けていないような気もする。傷つけたいわけじゃない。けれど、けれど、彼がいい。彼がいい。

 許してもらうことはない嘘を最後まで突き通そう。わがままだけれど。それくらいは許されたい。

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