ピクニック

 ここ最近、アル達とよく行動するが<英雄>の四人で何かをするということが久しい。

 なので、丁度全員暇だったので湖にピクニックをした。

 なおエミルは最近やたら忙しそうにしているので、無理矢理休ませた。

 根詰めても体壊すだけだし。



「で、ところでピクニックって何するの?」


「おい小僧……、景色のいい所、例えば山とか海とか川とか湖とかの野外に遊びに行く事じゃ。当然飲食類は現地調達が難しいからあらかじめ持参するのが鉄板じゃ」


「解説サンキュー」



 とりあえず適当に決めた湖に馬車を走らせた。

 野原にシートを敷き、用意したお弁当を置く。

 四人分だし、結構な量がある。

 まずサンドウィッチは一人一切れは手に渡るようにおおよそ六個ずつ、様々な具を挟んだものを三種類用意した。

 タマゴサンド、ベーコンレタスサンド、カツサンドの三つだ。


 あとは唐揚とウィンナー、ハンバーグと肉系が多い弁当箱。

 そしてもう一段には出汁巻き卵、ほうれん草のバター和え、チーズの盛り合わせ等、酒のつまみのような具を用意した。


 もちろん飲み物は酒メイン、一応ソフトドリンクを持ってきた。


「ただの酒盛りじゃのう。花見のシーズンにはちと早くないか?」


「いいんだよ、花見でしか外で飲んじゃいけねえ理由はねえよ」


 先の戦いで、自分がいつ死んでもおかしくない、むしろ何故今まで平和に暮らせていたのか不思議でならない魔族と出遭った。

 皆、そういう部分に意識があるようで、最近少々暗い。

 それを払拭したいので、今日のようなともかく騒げ遊べというイベントを企画した。




「ね、ねえナユタ。この水着似合ってる?」

「うわこのエルフ、黒いビキニで露出高いくせに胸貧相、うっわ、それでナユタにアプローチとか引くわー」

「そういうエミルこそ白いワンピースなんてあざといのよ! しかもパーカーまでつけて? 隠すようなもの何もないじゃない!」




 ナタリアとエミルの水着の貶しあいを眺めつつ、俺は湖に素足を付けた。

 冷たい。けど優しい感覚。




『はじめまして、仙狐の子』


「……」


 俺は無言を決めた。


『あの、もしもーし。仙狐の子? 聞こえてるのよね』


「ナタリア、エミル。この湖結構浅いから普通に泳げるぞ?」


『えっ、本当に無視? それとも仙狐の子じゃないとか? いえこの雰囲気は』


『うっせえ。何かようか』


 口にはせず、思念として相手に語りかけた。


『私はこの湖の主、そしてこの世界の水を司る』


『あ、そういうの間に合ってるので』


 俺は湖から出て、敷いたシートに戻り酒を煽った。

 いや、ほんとやめて。俺の血とかなんとかなんちゃら、大体良い話にならないじゃん。


 平和に生きたいので、そういう話はスルーしていきましょう。





『って思うでしょ? 仙狐の子が普通の人間として生きれるはずないのよ』


 はあ、さいですか。

 仙狐の子……、逃げていたわけではないけれどそろそろきちんと向き合う必要があるか。

 正直、人として、そして『英雄』としての限界を感じている。

 時間制限ありならばナタリアのほうが純粋な強さは俺より上だ。

 

 そして例の青髪の魔族が雲の上の存在としている。

 俺の師も負けず劣らずの化け物……いや実際に化け物なんだけど。

 となると、俺の強さは自分の知る限りで四番目だ。


 ……今度、故郷に帰るか。

 もし生きてたら、一応家族にナタリアを紹介したいし。

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