元勇者もまったり生活する
敵陣に乗り込み、化け物のような魔族と戦ってからおよそ1週間後、念のため毎日哨戒しているが敵の増援は見受けられない。
廃墟内の魔族はあの男が全員燃やし尽くしてくれたので内部には敵影はいなかった。
周囲はエミルの広範囲スペルで打ち漏らした連中がいるはずだが、それも見つけることはできなかった。
どこかへ逃げたかそのまま朽ちたか。
さておき、一度死を覚悟したがこうして無事に戦いを終えることができた。
「アルフォード。貴方はロロイナへ永遠の愛を誓いますか?」
「はい。一生愛し続けます」
今日はアルとロロイナの結婚式だ。
アルとロロイナが婚約したという話を聞いた村の職人が、いつでも式を上げられるよう式場を作っていたのだ。
アルは白いタキシード、ロロイナは純白のウェディングドレスを身に纏っていた。
これも村の職人が作ったものだ。
寸法も取らず、二人にぴったりのサイズを用意しているという用意がいいなんてレベルじゃない離れ業だ。
「ロロイナ。貴女はアルフォードへ永遠の愛を誓いますか?」
「は、はい。ずっと愛します!」
ロロイナは緊張のあまり声が少し震えているが、それでもはっきりと宣言した。
「それでは誓いの口付けを」
二人は触れる程度の口付けを交わす。
その後、俺を含む参列者は盛大に拍手をした。
ちなみに参列者は村の全員だ。
曰く「こんなめでたい日に仕事なんかしたら罰が当たる」そうだ。
「いいわね……、憧れちゃうわ」
ナタリアがぼそっと呟く。
いつものように俺に強請るような雰囲気はなく、ただ自然と発した言葉なのだろう。
結婚、ねえ。
ナタリアもその気なら、本気で考えるか。
式も終わり、披露宴という名の宴会がはじまった。
俺たちは酒をあおりつつ女将が用意したご馳走を堪能する。
「ナタリア、セレン。大変な事にボクは気づいた」
エミルが急に二人に声をかけていた。
「一番お子様だったロロイナが、今晩で一気に大人になる」
「「……!!」」
おい下衆な事言ってんじゃねーぞ。
そりゃあ夫婦になるんだから、そりゃな。
そしてこの流れになると、ナタリアとエミルが俺にアプローチしてくるのがわかりきっているので逃げるように今日の主役に近づいた。
「アル、改めておめでとう。やっと平穏に暮らせるな」
「ありがとうナユタ。色々迷惑かけたし助けてもらった。感謝してるよ」
「まあお互い様ってことで。これからもよろしく」
俺とアルはグラスを交わした。
さて、色々と変化はあったけれど明日からまた平穏にまったりと暮らしますか。
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