英雄色を好む?
夕食後、俺はリビングで料理レシピの本を片手に持ち、いつものように空いている片手をナタリアに貸していた。
「ところで、ナユタはちゃんと一般的な十八歳としての性欲ってあるの?」
「その反応に困る質問やめろ。『フルエンチャント』のデコピンするか、『耳舐め十分耐久勝負』にするか悩みどころ満載だぞ」
「自惚れかもしれないけど、毎日ナユタに愛してもらっているわ。ただ、性的なところまでは手を出してこないでしょ?」
ナタリアは「エルフの耳は性感帯だし、それを執拗にせめてるのは、ある意味性的?」とかぼやいているけど。
……、その一般的な十八歳が俺にはわからないので、なんとも答え辛い。
何を持って、性欲を抱くと考えていいやら。
正直、今はこのままの関係で満足しているし、飽き足らなくなる時期がくれば然るべきように段階を踏むのでは?
「ナユタの弱点っぽいの、もしかすると見つけた。『恋人』として進展するの、ちょっと気後れしているでしょ?」
「……否定はしない」
未だにナタリアを抱きしめられるのは後ろからだけ。
エルフの性感帯の耳を撫でるのは、もう既にしているから。
キスも、あの浴槽で互いに告白した際にしている。
既にしているから、という事しか俺にはできない。
その先を望むか、と聞かれると、欲求より不安が勝っている。
怖いんだ。
そこに依存するのが。
後ろから抱きしめられた。だから毎日抱きしめる。
耳を甘噛みできた。だから毎日する。
キスをした。だから毎日唇を重ねる。
そんな毎日に、もっと魅力的な何かが加わったら?
俺は自制心を抑えられる自信がない。
「そんなナユタには、ちゃんと私がリードしてあげる」
不意にナタリアの両手が俺の頬に添えられ、そのまま口付けをされる。
ナタリアは毎日事あればキスを求めてくるが、ナタリアからされるのははじめてかもしれない。
いつもの触れ合う程度の口付けより強く重ねられる。
そしてゆっくりと俺の唇の奥にナタリアの舌が挿入された。
キスする際、ちょっとだけ空けていた俺の歯の隙間からナタリアは遠慮なく舌を這わせ、俺の舌とを重ねた。
「っ……!!」
あまりの刺激に、ついナタリアの体を抱きしめてしまった。
ナタリアの体にしがみつかないと、この体勢を維持できないからだ。
水に溺れた人間の本能的な反応というか、そんな感じの。
そんな俺を抱きかかえるように強く抱きしめ、舌を強く絡めてきた。
ふと我に返り、ナタリアを突き飛ばした。
「発情エルフてめえ、さすがにやりすぎだろ!」
「あら、フレンチキスぐらいで大げさね? あ、でもちょっとしか出来てないから次はちゃんとしましょ?」
「大げさな訳ねえだろ! なんだあの感触。色々やべーわ!!」
「…・・・エルフが耳を舐められた時、あの数十倍感じてしまうのだけど?」
「…………。もうちょっとだけ心の準備をください」
「ヘタレ」
うっせえ色欲エルフ。
ナタリアの耳への愛撫はやめたくない。
反応すげえ可愛いし。やりすぎるとあれだが。
多分、ナタリアはそういう反応を俺に期待してさっきみたいなキスをしてきたんだろう。
拒否はできない。散々今まで俺がナタリアにしてきた事のようなものだ。
……………。
大丈夫かな俺、ちゃんと節度守って生きていける?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます