クラスを選ぼう
「ねえナユタ。ちょっと相談なんだけど、フォースクラスを何にするか考えてるけど私は何を取ったらいいと思う?」
料理屋<英雄>の定休日に、俺の家のリビングでだらだらと過ごしているナタリアから変な質問を受けた。
「それはまずサードクラス取得条件を満たしてから聞けぽっちゃりエルフ」
こいつ剣士のクラスはLv90近いのにセカンドで取った武士のクラスをまったく上げようとしていないのでまだLv20程度らしい。
最初のクラスは冒険者登録時に自身が取得できるクラスの中から好きなものを選べる。
仮に才能が乏しくても、選択肢にさえ入っていればクラス取得が可能だ。
まあ、才能がないので努力して強くなるしかないので苦労するはめになるのだが。
続いてセカンドクラスを取得できる条件は最初の、ファーストクラスのレベルを50まで上げることだ。
ファーストクラスと同じく選択性だ。ファーストクラスとして培った経験で選択肢が広がっている事が多い。
そしてサードクラスはファーストクラスがLv80、セカンドクラスがLv50で取得可能だ。
選び方はセカンドと同じだ。
このぽっちゃりエルフは剣っぽいクラスならそれで、みたいな感じで適当に武士を選んだらしいが刀との相性が最悪だったため、滅多に刀を使わない。
よってファーストクラス剣士のレベルだけが飛びぬけて上がり、セカンドクラス武士のレベルが申し訳程度にしか上がっていない。
「そもそもサードクラスは何を取るつもりだったんだよ」
「付与師。ナユタが息を吸うようにバフとデバフを付与してるの見てると便利だなあって」
「セカンドクラスの選び方以上に酷い発想だな。俺がいるんだから自分で付与する意味まったくないだろ」
「でもナユタは私に付与してくれないし」
「事と次第ではいつだって『フルエンチャント』してやるっての。それをするほど苦戦することなかったろ」
「いえ、ナユタの発想だときっと『ぽっちゃりエルフに付与するぐらいなら俺が本気出すほうが手っ取り早い』って思うでしょ?」
否定はしない。まあ本当に最悪の事態になれば俺含め4人に『フルエンチャント』をかけてやれる。
「ともかく、パーティ的に同じクラスが重複するメリットはあんまないんだ。パーティリーダーとしてもだけど、普通の助言としてこのパーティに足りないものをクラスで補うのが理想だとは思う。意識して欲しいと思うクラスがないなら尚更だ」
「それはそれでこのパーティに所属し続けること前提の考えよね?」
「え? 俺ら死ぬまで一緒のパーティだろ?」
「……、時々ナユタの仲間想いが重たい。いえ嬉しいんだけど」
なんかおかしい事言ったか?
いや寿命的な話なら、まずエミルが普通の人間として亡くなって次に俺か。
そういう意味だと、このパーティとしてはあと80年が限度か。
「じゃあパーティ目線じゃなくて、俺が思うナタリアの不足部分を元に、とりあえずサードクラスは回復師がベターじゃね? ナタリアの剣の腕は確かだけど長期戦には不向きだろ? だから要所要所で下がって自己回復とバフのスペルでそれを補えばいいんじゃない?」
「なるほど。ついでに前衛で戦えるパーティのヒーラーにもなれる。回復師なら付与師ほどではないけれどバフの恩恵を得られる。さすがバトルジャンキー。効率的すぎるわー」
「褒めてるのか馬鹿にしてるのかわからねえのやめろ。『フルエンチャント』と『状態異常:激痛』を付与したデコピンするぞ」
「やめてっ!? あ、そういえば付与師の『フルエンチャント』って自分が使える付与を全て発動できるのよね? 時々私たちを脅す時なんで『フルエンチャント』とついでに痛そうな付与をしようとしているの?」
「『フルエンチャント』の付与と単体の付与は重複で発動するから」
「じゃあ何? 『フルエンチャント』かつ更に『激痛』を与えるデコピンをしようとしてるの? 鬼! 悪魔! ナユタ!!」
「おい本気でひっぱたくぞ」
鬼と悪魔と同等の扱いかよ。
「話は反れたが、というか大前提をクリアしてないぽっちゃりエルフに改めてフォースクラス取得の条件と制限を教えてやる」
フォースクラス取得の条件はファーストクラスはLv90以上、セカンドクラスはLv80以上、サードクラスがLv50以上が最低限の条件だ。
「フォースクラスは非常に残念な事に、勝手に取得してしまうんだ。ギルド側もフォースクラス取得者が稀なんではっきりとはしてないらしいが、どうやら当人にとって一番相応しいクラスになるとの事だ」
もちろん三つのクラスがすべて適したクラスだった場合、消去法で4つ目に相応しいクラスが自動的に与えられてしまう。
戦闘系クラス避けてきた俺が好き好んで勇者なんてクラスを選ぶか。
「…………じゃあいいわ。フォースクラス目指すの辞めた。どうせ弓術士だろうし」
「そのほうがいい。選択の自由を奪われて『お前は本当はこれが本命だ』なんて勝手に与えられたクラスなんか嬉しくもなんともねえよ」
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