ナユタの過去

 ナユタが鼻歌交じりで夕飯を作ってる最中に、<英雄>の三人が小声で会議を行っていた。


 議題:ナユタってなんで十二歳で冒険者なのか。


 制度としては確かに冒険者ギルド登録は十二歳から登録可能だ。

 しかしどの種族も一般的に十五歳で自立する権利がある、という決め事がある。

 つまり、当時自立できないはずのナユタが十二歳で冒険者になった経緯が今回の議題だ。


 なお一般的な自立が十五歳に対し、十二歳から冒険者になれるのは孤児の自立の為の後ろ盾となるためだ。


 ナユタは色々無関心な部分はあるけれど、事奴隷については率先して動いていた。

 少し前の闇奴隷商の件もあるし、奴隷制度を逆手に取った強引な孤児救済の立案もある。


 もしかして孤児で酷い目にあっていたのか?

 実は闇ルート出身とかいう重い過去があるのでは?

 それとも好きな女子が奴隷に関する……、いやこれは「初恋はナタリアで今も好き」っていう爆弾発言してるからこれはないか。


「ナユタはなんで冒険者になったの?」


 世間知らずのポンコツ公爵娘が直球でエンブリオたちの疑問を本人に尋ねた。


「お前と同じだよ、家出したんだ。衣食住を得る為には冒険者が手っ取り早かったからな」


「ボクが聞くのも変だけれど、どうして家出したの?」


「俺が楽しみにしていたプリンを姉貴が勝手に食いやがった。だから姉貴に謝れってキレたんだけど、親父もお袋もプリンぐらいでみっともないって、まるで俺が悪いみたいに責めるから、本気でブチ切れて家ぶっ壊して出て行った」


 子供か!? いや子供だった。


 しかし本当に残念な事に、ナユタは神位『英雄』なので、そんな子供染みた家出を切欠に国が誇る冒険者の1人として目覚めてしまった。




 食べ物の恨みが、もしかすると世界を救うのかもしれない。

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