<英雄>のリーダー

「ナタリア。ナユタは確かに色々規格外じゃが、あくまでただの18歳の人間と接してやれ」


戦いには常人離れしているナユタだが、あくまでただの青年だ。いや、勝手気ままに振舞っていた時期が長すぎて精神年齢は未だ少年か。


「わしがナユタとパーティ組んだって話を軽く話したじゃろ。その結末がのう、ナユタのトラウマなんじゃよ」


自分が好き勝手やった結果、多数の人が離れていくという事象に12歳の少年が耐えられるはずもない。


「不満たらたらだったが、勇者のパーティにいたころのナユタは歳相応に見えての。やはり仲間が欲しかったのじゃなあってわしなりに考えておる。

 <英雄>の結成は、確かにわしもナタリアにもメリットはあったが、むしろナユタが意欲的なのが驚きじゃった。

 心境の変化か。あれが本来のナユタなのかはわからぬ。だが、誰かを必要としている事は確かじゃ。」


そもそもエンブリオが最初「パーティは組んでいない」と発言したのも、ナユタがパーティリーダとして担ぎ上げられる事に、ナユタ自身の重荷になるのではと思ってのことだった。


「…………」


ナタリアは先のやり取りを振り返り、エンブリオとの会話を踏まえ思考を走らせる。

いつも唯我独尊な態度のナユタが、自分らの顔色を伺いながらお願いをしてきた。

エミルの介護なんて大したことないのに、受け入れると驚くほどに笑顔だった。


「ナユタはパーティリーダーそのものに後ろめたさを感じているのね?」


「ざっくり言うとそうじゃな。だが、あの下出に出てる態度がナユタだと思うか」


「いえまったく」


「じゃからの。これはこれでナユタのパーティミッションでもある。『普段どおりにわしらと接しろ』とでも言うべきか」


「簡単なようで、難しいわね」


「簡単じゃ。お主の言っていた『自分がお荷物』みたいな考えを捨てればいい。遠慮はいらぬ。ナユタははご存知の通り義理堅い。よほど愛想尽かされなければ見捨てられぬよ。普段どおり接してあげればよい」


「……そのために私はまず痩せる事が必要ね! 昔みたいにならないと、愛想尽かされるもの!!」


「あ、え? 大丈夫じゃよ、デブエルフでも見捨てないみたいな事言ってたから」


「中途半端な優しさが心をえぐる! 絶対痩せてやる!!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る