弱点

「せっかくだし、俺の弱点も言っておくか」


「全スキルが使える『英雄』と『マルチウェポン』で多数の武器が使えるナユタ様に弱点ねえ」


 ナタリアは棘のある返しをする。

 まあ、そりゃ剣どころかほとんどすべて俺のほうが上位って思い込んだら仕方ないか。


「俺の行動は近しいスキルを模倣されているだけで、ただの通常行動だ。いいか? スキルじゃない、ただの行動、それだけだ」


「……?」


「ナタリアよ、もうちょい自分で考えてみるんじゃ。わしらはどうやって『スキルのレベル』を上げておる? そして新たなスキルはどうやって身につける?」


「どうやってってスキルを何度も使って錬度を上げて――!! つまりナユタはスキルのような行動は取れるけどスキルじゃない。だから錬度が上げられない以上、総じて「スキルレベルLv1」ってこと?」


「正解。加えてスキルレベルを上げた結果得られる上位スキルは使いこなせない」


「クラススキルを全て使えるのに?」


「使えなくは無い。例えばだ、ナタリアにわかるように剣士で例えると、『ソードダンス』ってあるだろ? あれは『連撃』の上位スキルだが、俺があの動きを再現しようとするとただ剣を振り回すだけの滑稽な攻撃になる」


「……『連撃』自体Lv1なのにさらに高速で乱舞する『ソードダンス』は制御できないと」


「そいうこと。知識はある。行使する神位の恩恵もある。だが使いこなせるかは別物ってこと」


「戦士のスキルは特に相性が悪かったのう。戦士は基本攻撃を受ける事前提じゃから」


「そ。俺の軽装で戦士の真似するのは無理。先に命が消えるっての」


「便利そうで、不便なのが英雄の神位じゃ」


「武器を絞って全うに戦闘系クラスになってもよかったけど、俺は『マルチウェポン』を生かすために生産職のクラスを選び、『索敵』と『加速』というどのクラスでも使えるスキル上げを優先した」


 種を明かせばただの手品だ。

 とはいえ、奥の手はない事はない。

 

 一応ナタリアには言った。「『英雄』については今から嘘偽り無く話す」と。

 だが奥の手に関しては聞かれてないので答えないだけだ。

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