『英雄』

 神位とは人類が編み出したクラスに該当しない、神が人間に与えた位だ。


 そもそもクラスとはその道、例えば剣であれば剣士が死に物狂いで極め、これこそがクラスであると証明し、そして認知されてこそ始めてクラスと成りえる。

 何億年と続くこの世界で剣や槍、魔法、鍛冶色々な達人や技術者が研鑽を積み上げてきたからこそ、スキルという形でそれを受け継がせることができる。


 冒険者はその恩恵を受けるだけにすぎないが、もちろん一部例外がある。

 同じく研鑽を積み新たな技術を生み出し、それをスキルとして後世に残すものも少なくは無い。

 そういった積み重ねを続けた結果、いや今も積み重ね続けているものもいる。

 おかげでクラスという安易に技術を得るシステムが出来上がった


 しかし限界はある。


 何十本の剣を同時に扱いたいと考えても人の腕は増えない。仮に増やすスキルがあったとしても、十刀流はただの凡人剣士の普通のスキルに太刀打ちできない。

 空間魔法が使えても、時間を操る魔法は誰も扱えない。

 この世の摂理とでもいうべきか。抑止力が働くのだ。


 その世界の抑止力を無視し、全うな人類の限界を越える能力を神から与えられたのが神位だ。




神位:英雄


 その名の通り、魔物の脅威や悪から受ける酷な仕打ちから、自分をもしくは世界を救って欲しいという人々の切なる願いを叶える救世主の総称だ。


 英雄の敗北はすなわち、人類が魔物や悪に負けたという証明になってしまう。

 故にこの神位は人類の英知をすべて授ける。


 ってのを昔、文献で読んだ。うろ覚えだけど大体そんな感じの内容だったはず。


「ま、要するに俺は『英雄』だから全てのスキルが使えるんだよ」


 厳密には俺の行動がすべて近しいスキルとして再現する。

 スキルはSPを消費するのに対し、俺は通常行動と認知されるためノーリスクで行使できる。

 当然通常行動なのでスキル発動に必要な「スキル名」を口にする必要はない。

 低レベルかつ初歩的なスキルでも常時発動し続けるのは達人でも不可能だ。

 動き一つ一つにSPを消費するし、スキル名を行動全てに対し口にするとか逆に効率が悪い。


「チート……」


「うっせえぽっちゃりエルフ。約束だかんな、絶対黙ってろよ」


「そこは安心して欲しい。というか話した所で荒唐無稽すぎて信じて貰えないし!?」


「ナユタは『英雄』の神位と『マルチウェポン』の相乗効果でほぼ無敵状態ってところじゃな」


「しかも国宝級の武器を自力で作れるんでしょ。もうあんたが世界を救いなさいよ」


「いやそれは勇者の仕事だし」


「「ちゃっかり勇者のクラス持ってるお前が言うな!!」」

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