強さの秘密

 俺の強さが『マルチウェポン』だけでは説明が付かないとぽっちゃりエルフがわめくので、今日泊まる予定だった宿に移動する。

 流石にナタリアは女性なので1部屋を取り、俺とエンブリオは2人用の部屋を取った。


 なるべく聞かれたくない話なので、1人部屋よりちょっとだけ広い2人用の俺らの部屋にナタリアを呼んだ。


「それで、ナユタ。あんたが生産職ないし付与師にしては、いえ普通の戦闘系クラスよりも馬鹿げて強い理由は何?」


「それなんだが、先に言っておく。俺は今から嘘偽り無く話す。そしてこの事は他言しないように」


「……わかったわ。それだけ凄い秘密なんでしょうね」


「俺自身はただの錬金術師だ。筋力や体術はまあ鍛錬でいくらでも鍛えられるから、その点でいえば普通に努力した、とも言える。だがそれだけなんだよ。俺はちゃんと努力して一流の体術を得ている、それだけだ。」


「ちょっと、むしろ弱いですアピールになってない!?」


「だが、武器が強いんだ。例えばこれ、手にしてどう思う?」


『マルチウェポン』からナタリアが使いそうな剣を取り出した。


 ナタリアはそれを手にし、刃や柄など真剣に鑑定する。


「何これ、国宝級じゃない……!?」


「このレベルの武器が何十と俺の『マルチウェポン』に収納されている。つまり、そういうことだ」


「でもどうやってこれ程の武器を?」


「俺のクラス覚えてるか?」


「錬金術師、付与師、鍛冶師……っ! わかったわ、全部自作なのね!」


「そういう事。最初は錬金術で作ったアイテムや装備を駆使して辛うじて戦えてたが、付与師のスキルを覚えてから作る武器の威力が跳ね上がった。さらに鍛冶師のスキルできちんとした武器を作り、錬金術と付与のスキルで極限まで武器を鍛えてきた」


 渡したショートソードの素材は錬金術のスキルで練成した世界で一番硬いアダマンタイト合金だ。

 それを鍛冶師のスキルで一級品に仕上げた。

 更に付与師の装備付与スキルで数々の付与を付けている。

 付与したスキルを挙げればキリがないが、最たる付与として挙げるとすれば高レベルの『切断』だ。

 これだけでアダマンタイト合金ですら簡単に切り刻める。


「……なるほど。筋は通ってるわ。けれど馬鹿にしてくれないで欲しいわ。武器が凄くても私の剣の腕を越えるわけないじゃない」


 はあ、やっぱり。この言い訳で大体納得してもらえるんだが、ナタリア相手じゃ無理かー。


「ナユタ、観念したほうがいいぞ。今はこれだが、ナタリアはナユタに次ぐ高位の前衛じゃぞ」


「えっ? 今はこれって何!? えっ!?」


「今度体重計に乗ってみるといいよ、あと全裸の自分を鏡で見てくれ」


「………………」


 ナタリアはまず顔を手でさする。頬をつまむが特段昔と変わらないといった様子だ。

 そりゃそうだ。まだ顔に贅肉の魔の手が伸びておらず美人のままだから。


「腹掴んでみ」


 恐る恐るナタリアは自分の脇腹を掴んだ。

 ひっ、と小さく叫ぶと。


「…………ナユタが悪い。美味しいご飯作るからだ」


「自業自得だろぽっちゃりエルフ」


「それはそれとして! で、結局ナユタの強さってなんなのよ!!」


「口で説明するの面倒だから、これ見ろ。ギルドカード、ナタリアに閲覧権限を限定付与」


 ギルドカードの内容はは本人しか閲覧できない。

 強いて言えばギルドカードの新規発行や更新を行ったギルド職員がその際に見る事ができる程度だ。

 つまり他人に見られないよう完全なプロテクトがかけられている。

 ただし本人の許可があれば限定的に第三者も閲覧可能にはできる。


「ほらよっ!」


 ナタリアに俺のギルドカードを放り投げた。


「ちょっと、大事なギルドカードを粗末に扱わな…………。いやごめん、一個だけ言わせて」


「一個でいいなら」


「チート」


ナユタ

1stクラス:錬金術師 Lv99

2ndクラス:付与師 Lv99

3rdクラス:鍛冶師 Lv67

4thクラス:勇者 Lv47

『神位:英雄 Lv99』


「神位なんて古代神話の存在だと思ってたのに存在してたなんて……」

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