そういえばナユタのクラスって何?

 俺は八人の子供一人一人にお別れをする。

 中には「お兄ちゃんと一緒がいい!」とか言ってくれる子もいた。

 でもみんなして最後は「助けてくれてありがとう」と言ってくれた。


 性格が悪いのは自覚しているが、悪人ではない。

 誰かを助けたという実感は心に響くものがある。




 別のギルド職員が子供たちを丁寧に引き取ってくれたのを見届けた後、リザリーからギルドクエストの詳細説明を受けた。


 ジャイアントワーウルフはワーウルフの上位固体で、調べによれば村の南西の洞穴を寝所としているようだ。

 その洞穴はナナシー村からかなり離れており、流石の俺もそこまで足は運んでなかった。

 基本的な行動パターンはワーウルフと同じだが、巨大な体躯にも関わらずワーウルフより俊敏というのが、前回別の所で発生した際の情報だ。

 付け加えるなら魔法のようなものが使え、主に雷を放出することもあるらしい。

 さらに特徴として、周囲のモンスターを隷従させ基本的に狩りは他のモンスターにやらせておりジャイアントワーウルフ自体は滅多に外にでないとのことだ。


 面倒そうな相手だが、まあ俺一人でいけるか。

 むしろ雷の攻撃が範囲攻撃の場合、下手に連れがいると対応が遅れる。


「おっけ、んじゃ受注な」


 そういやクエスト受注は一年ぶりぐらいか。

 勇者PTで十ヶ月ぐらい拘束されてたし、抜けてからだらだらと二ヶ月ぐらい過ぎてたし。


「えっ、勝手に決めていいのですか!? 討伐自体は英雄たちなら可能でしょうが、クリア報酬についてエンブリオ様と念のため連携しておかないと揉めますよ!?」


「え、いや俺1人で受けるし」


「さすが英雄、規格外」


 ちゃちゃっと受領サインをした。


「そいやさ、噂にはなってるっぽいけど俺とエンブリオとナタリアは勇者パーティ抜けてるから」


「はい存じております」


「そ、一応報告。あとあの勇者、中々ギルドカード更新させてくれなかったから、今やってくれる?」


「ええ、もちろん」


 エンブリオも別のギルド職員とやり取りをしている。同じく状況説明とギルドカード更新だろう。


「わ、私のギルドカード……更新を頼む」


 まだ完治してないのか、顔色の悪いナタリアがギルドに現れた。

 同じく窓口で更新手続きを行おうとしていた。


「どうされましたか? 無理なクエストを受けてヘバって……ってナタリア様!?」


 心中察します。

 長身痩躯の美人剣士エルフは、今ではこんな残念ぽっちゃりエルフなんだから。

 しかも今は馬車のせいでグロッキー状態。

 英雄と呼ばれていた時代の面影はちょっとしか残ってない。

 具体的には身長とまだ顔だけは肉がついていないので美人ってのと、エルフってところだけな。




「はい、更新完了です」


「サンキュ。討伐の件だけど、まあ4日後までには報告するよ」


「……いえ、英雄殿は規格外だなあと」


「ところで、金は払うからポーションか誰かヒールをあのぽっちゃりエルフにかけてやれ」


「ヒールかけておきます。お代はいりませんよ……」




 ふむ、一年ぶりのギルドカード更新だ。

 特に目立った変化はなかった。俺の成長も打ち止めかー。まだ18歳だってのに。


「ところでナユタ。あんた自己紹介する時いつも『マルチウェポン』って名乗るけどそれスキルでしょ? 普通クラスを名乗ると思うんだけど、実際なんのクラスなの?」


 ナタリアは剣士、エンブリオは戦士だ。

 ちなみに俺はというと――


「錬金術師だ」


「……え?」


「あとセカンドクラスは付与師、サードクラスは鍛冶師だ」


「生産職二つに支援職!? なのにあんな強いのなんで? いえそのクラス編成だから『マルチウェポン』が取得可能に……?」


「いや『マルチウェポン』は生まれつきのスキルだ」


「ありえない。確かに生産職や支援職だからって戦闘能力が低いわけはない、これは辛うじてわかるわ」


 ナタリアは顔と長い耳を真っ赤にし、贅肉をぷるぷると震わせ怒りを表現する。


「なんで剣士の私より剣の腕が立つのよ!!」

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