馬車は武器
翌朝、朝食を済ませた後、簡単な準備をし『マルチウェポン』から馬車を引き出した。
「前々から思ってたのだけど、馬車がなんで『マルチウェポン』に収納できるのかしら?」
「え? 武器だからだけど?」
「いやその理屈はおかしいと思うから聞いてるのだけれど……」
ナタリアは頭を抱えた。
「といってもなあ」
「ナユタの馬車は武器じゃし」
エンブリオも同意してくれる。
「ナタリアは元々勇者パーティだったから知らないのだろうが、わしとナユタのパーティでな」
「えっ、あんたら付き合い長いの!?」
「えー、そこから説明すんの面倒だから端折るけど。前のパーティで雑魚モンスターが進路の邪魔をしたからそのまま轢き殺した。それ以来武器扱いされたのか収納できるようになったんだよ」
「基準そこなの……?」
「そもそも『マルチウェポン』自体が前例の少ないユニークスキルじゃし」
「使ってる俺も原理わかってねーしなー」
空間魔法で好きなものを閉まっておくスペルはあるらしい。
けど俺はスペル使えないし、そもそもこれはスキルだし。
「さて、全員乗ったか?」
「ええ、私含めて十人、荷馬車に乗ってるわ」
「んじゃ出発っと」
俺は馬二頭に命令を出す。
「サザー街まで2日ってところかしら」
「いや半日でつくけど」
「え?」
「子供たちが辛そうだったら教えてくれ、そしたら速度落とすから」
まあ、助けた時に誰一人問題なかったから大丈夫だと思うけど。
「一応言っておく、ナタリア。お前は辛くても我慢しろよ」
俺は馬に激を入れた。
途端、ゆっくり目の歩みから一気に加速した。
およそ通常の5倍の速度だ。
「ほっほ。久しぶりの乗り心地よ」
「嘘でしょ!? 何この速度!!」
「バカ勇者がこれやると酔うからやめろって言われたんでずっと普通の馬車のふりしてたんだよ」
ナタリアの驚く声と、子供たちの楽しそうな声が聞こえた。
「これでわかったじゃろ、この速度なら多少のモンスターぐらい轢き殺せるんじゃよ」
「……確かにもうこれ武器ね」
「納得いただけたようで」
とはいえ、モンスター以外を轢き殺すわけにもいかないので『索敵』を常に展開し、いつでも馬を止められるよう集中する。
半日ぐらいなら、大丈夫だろう。
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