元だけどなんだかんだで勇者パーティーの一員
八人の子供を徒歩で村まで歩かせるのは酷だったので、『マルチウェポン』で馬車を取り出した。
流石に人攫いのクズ奴隷商人の馬車にそのまま乗せるのはもっと可愛そうだし。
あとおっさんどもの血とか死体とか衛生的に悪いし。
「さあ、これに乗って」
「私、この馬車見たことある。勇者様のだ」
「まあ、実は俺のなんだよ」
普通に忘れてたけど、俺クビにしたあと移動手段どうしてんのかな。
まあ適当に新しい馬車買ってるだろ、きっと。
「お兄ちゃん、凄い人?」
「凄くはないかな。ちょっと強いだけ」
子供たちを乗せ、ナナシー村へと帰還した。
「てことで、すまん、ちょっと手を貸してほしい!!」
俺はエンブリオとナタリアに事情を説明し頭を下げた。
「いやナユタの行いは正しい。わしだってそうする。協力は惜しまぬ」
「まったく、ほんと人間は愚かね。当然私も手を貸すわ」
八人の子供の世話なんか俺1人でできるわけなく、2人に頭を下げた。
「とりあえず私はお風呂を用意するわ。といってもナユタの家のだけど」
「問題ない、使ってくれ」
無駄に広い浴場だから、子供八人ぐらいは余裕だ。
「わしは衣服と食材を用意するとしよう。料理はできぬから、あとは頼むぞ」
「任せろ! なんなら今の俺は料理ぐらいしかできん!」
エンブリオはあれで交渉が得意だ。
元々貧困している村からいきなり八人分の食材と衣服を手に入れる手腕は俺にはない。
あと狩りも得意だ。俺には狩りなんていう繊細な戦いは向いてない。
二人の協力のおかげで8人の子供は風呂で汚れと垢を落とし、綺麗な衣服を身にまとった。
そして俺は出来上がった料理を十人に振舞った。
「さすがナユタの飯は美味いのう」
子供たちが無我夢中で料理を運んでいる中、暢気にエンブリオが舌鼓を打つ。
「それよりこの子たちの今後、どうするの? まさかこのまま養うつもり?」
「んなわけあるか。今日は一旦泊めるが、明日にはサザー街に行ってギルドに任せる」
「妥当じゃが、かわいそうな気もするのう。よくて孤児院、悪くて奴隷か」
「いやいや。あのクズ奴隷商は人攫いだから、子供には普通に親がいるだろ。その親御さんを探してもらうだけだよ」
「その根拠は」
「孤児になった際、まず奴隷になる。このルールは絶対だ」
これは子供たちの風呂の世話を任せたナタリアに奴隷紋の有無を確認させたので間違いない。
十八歳未満の子供が両親を失い孤児となった瞬間、強制的に奴隷紋が付与するよう「俺の立案」で無理矢理この国のルールとした。
それに必要な大陸規模の展開魔法も俺が提供した。
俺は魔法陣なら作れるが魔力自体はなけなしなので使用できないのが困った所なんだが。
予め奴隷となってしまえば、国が奴隷紋を通し管理ができるので、奴隷が追加された際に本人へ直接状況が確認できるようになる。
そして奴隷は立派な地位だ。孤児の場合、むしろ平民よりは手厚い保護を受けられる。
奴隷として自立するか、孤児院に保護されるか、それとも他の身寄りの世話になるかを選択できる。
もちろん、本当の意味で自立ができるなら奴隷紋はいつでも外せる。
さらに闇ルートに正規の奴隷を卸そうとしても既に奴隷紋があるため、国の監視下にある状態の子を扱うことはできない。
しかし、じゃあ攫おうって考える辺り、クズはほんとクズだなあ
「本当に親が売っていたとしたら?」
「ま、そのクソ親は即日死刑だな。可愛そうだけど子供は本当の奴隷になるが、そん時考えるわ」
正規ルート以外での奴隷売買は極刑の犯罪だ。
「ついでにお前らもくるか? そいやギルドに現状報告してなかったろ?」
「そういえばそうね」
「わしも失念しておった」
これでも一応元勇者パーティの一員なので、音信不通だと色々迷惑かけてそうだ。
「てことで、今日はここでお泊りしたら明日は大きな街に行くからね?」
俺は子供たちに愛想を振りまいた。
「ナユタもちゃんと愛想ぐらいできるんじゃな?」
「いつも悪い目つきで睨んでて、笑っても残虐そうなあの子がねえ」
うっせえぞ髭親父とぽっちゃりエルフ。あとでしばく。
こうして子供たちの保護の方針が決まったので、明日に備えて俺も寝ることとした。
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