ナユタの料理
俺の『マルチウェポン』には上限がない。
「万能包丁」
料理器具もその例に漏れない。
他にも刺身包丁、ペティーナイフ、果物ナイフ等々刃物関連の武器は俺の能力でいつでも取り出せる。
「今日は魚料理がいいわ。はいこれ、材料」
最近釣りにハマっているナタリアが魚を3匹俺に渡してきた。
「今日採れた山菜と果実もあるぞ」
エンブリオはハーブと赤い身の果実を俺のキッチンに置いた。食える草全部山菜ってまとめるのやめてくれる?
「よし、今日は魚のハーブ焼きがメインディッシュだな。って一応聞くけどなんで毎日俺の飯たかるの?」
「材料渡しているじゃない」
「ナユタの飯は美味いからな。あと食材渡せば実質タダじゃし」
「完全に搾取されてるよな、俺。お前らも料理ぐらい覚えろ」
料理を覚えると決めてから約半月がたった。
自分でも驚いたのだが、肉もまともに焼いた経験がない俺だがレシピと、あと世話になった宿の女将の助言のおかげで今ではそれなりの技術を手にしていた。
「ナユタはさ、このまま働かずにいるの? このまま料理人目指してみたら?」
魚の仕込みをしている俺にナタリアはそう提案してきた。
「わりと本気で料理人はありだと思ってる。この村、宿以外で飯食える所ないからな」
「一階のホールがそのまま店として使えるしのう。良いのではないか?」
「ただなー、この村ってこんな状況じゃん? 安定した流通が望めないから現実的ではないんだよ」
「料理屋開くために村の復興をするってなると、どっちが本業かって話ね」
「そそ。俺はただまったり過ごしたいだけなの。あんたらもそうだろ?」
「まあね」
「じゃのう」
「ってなわけで、俺の料理は俺が生きる為の手段かつただの趣味。はいお待ちどうさま。魚のハーブ焼きとシーザーサラダ、それにコンソメスープ。パンは小麦が流通してないのでなし。代わりにデザートのフルーツタルトだ」
「わあ、美味しそう!」
「さっそく、いただきます」
二人はお行儀よく食してくれた。
しかし料理人ねえ。
「臭みのない、けれどしっかりと味がある魚なんて国王のビュッフェでも出てこないわ!」
「わしは基本的に肉食じゃが、このサラダはフォークが止まらぬ。この瑞々しい野菜とドレッシングが溜まらぬ」
「「そしてこのデザート!」」
色んな所旅してきて、色んな飯食ってきた俺らだ。
それこそ王宮の豪華そうな食事もいただいた事がある。
そんなこいつらがここまで美味しそうにしてくれるのをみてると、わりと本気で料理人目指すかって思ってしまう。
ま、出来る限りこの村の復興がんばりますか。
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