我が家、完成

「出来たぜあんちゃん!」


 それから幾ばく、宿の食場で寝そべってる俺に棟梁が笑顔で肩を叩く。

 マジか! これで宿生活からおさらばだ!


「女将、会計!」


「いやあんた律儀に毎日払ってるでしょ。ツケも一切ないよ」


「俺が食場でごろごろしてた代」


「はあ、そうさね。最後に今晩泊まってちょうだい。もちろん御代はいただく」


「よくわからんがオーケー!」


 確かに1ヵ月は過ごしたこの宿をあっさりと離れるのはなんというか寂しい。

 そんな気持ちを汲んでくれたのかな。


 しかしそれより俺の家だ!




「すっげえ……」


 王都の貴族よりも立派な家がそこにあった。

 

「へへ、あんちゃんの払いもいいし、俺の腕を買ってくれてるから本気だしたぜ」


 三階建ての俺の家に入ると、一階はほぼホールだった。

 最低限のキッチンと洗面所があるだけ。複数の客人を招く為の場所のようだ。


 二階に行くと広いキッチンとリビングと洗面所、あとでかい浴室があった。


 三階に入ってようやく個室が用意されていた。ただし5部屋。あとそれと洗面所。


「気に入ったかい?」


「いやちょっと引くってか部屋の数多くない? 俺独り身だけど」


「ないよりあったほうがマシだろ? あんちゃんからもらった報酬から、これぐらいしねーと釣り合わないんだよ」


 勇者パーティで得た金があるから金銭的な問題はない。

 村長に案内された土地を買ったに過ぎない。

 棟梁にはちゃんと代金を支払っただけだ。

 最初は無償で建てようとしたので、纏まった金を渡した。


 ナタリアに「土地ごと家買って永住するつもりなの!?」っと驚かれたが、そもそもこの村で骨埋めるつもりだから。


 しかし、棟梁に渡した金が多すぎたのか?


「ところで」


「全部の階にトイレ設置、全部水洗だぜ?」


「棟梁マジありがと。なんか家作りに困ってる奴いたら全部棟梁薦めるわ」


「へっ、気に入らない奴だったら断るからな」




 こうして、5人用の家に1人暮らしする生活が始まった。

 ただし、飯は自力だが。


 仕方ない、どうせ暇なんだ。料理ぐらい覚えるか。

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